職場でプレゼンをするとき、仲間と写真を撮るとき、矯正装置がキラリと光るのは気になる――そんな理由で治療をあきらめていませんか。裏側矯正はワイヤーとブラケット(歯に貼る小さな金具)を歯の裏側に装着するため、正面からはほとんど見えません。欧米では1980年代から行われ、日本でも日本矯正歯科学会が2024年に発表した統計で、成人矯正の18%が裏側を選択しています。とはいえ費用や痛み、発音への影響など気になる点も多いはず。本記事では専門用語をかみくだき、裏側矯正の流れ、表側やマウスピースとの違い、費用と期間、最新テクノロジーまで網羅的に紹介します。
そもそも裏側矯正とは

裏側矯正(リンガル矯正)はその名の通り、ブラケットを舌側に貼り、そこへオーダーメイドのワイヤーを通して歯を動かす方法です。裏側は表に比べカーブが急で凹凸も複雑なため、近年は3Dスキャナーで口腔内を撮影し、コンピューター上で理想の歯列をシミュレーションしたうえで、金具とワイヤーを機械が自動成形するのが主流になりました。この精密化により、一昔前より治療期間が短縮し、舌への違和感も軽減しています。
治療のステップを簡単に

- 検査
レントゲン、3DCT、口腔内スキャン、顔写真を撮影し、むし歯や歯周病のチェックも行います。 - 治療計画と見積もり
完成予想の3D画像と期間、費用、リスクを説明。納得したら同意書を交わします。 - ブラケットとワイヤーの製作
専用工場で一人ひとりの歯型データを基に設計・切削。完成まで2〜4週間ほど。 - 装置装着
裏面にブラケットを専用接着剤で貼り付け、その日にワイヤーをセットします。 - 調整通院
4〜6週間おきにワイヤー交換やゴム掛けの指示。所要時間は20〜30分。 - 仕上がり確認
理想位置にそろったら装置を外し、保定装置(リテーナー)で後戻りを防止します。
表側・裏側・マウスピース 三方式の比較表
比較項目 | 裏側矯正 | 表側ワイヤー | マウスピース |
---|---|---|---|
見た目 | ほぼ見えない | 金具が見える | 透明でやや分かる |
症例範囲 | 軽度〜重度まで対応 | 軽度〜重度まで対応 | 軽〜中程度 |
期間目安 | 1年半〜3年 | 1年半〜3年 | 1〜3年 |
発音への影響 | 最初の2週間さしすせそが言いにくい | 影響ほぼなし | 取り外せるため少ない |
歯みがき難易度 | 90万〜140万円 | 普通 | 外して磨ける |
費用相場 | 90万〜140万円 | 70万〜110万円 | 60万〜100万円 |
裏側矯正のメリット
目立たないからストレスが少ない
会議、接客、就活、結婚式。大事な場面で装置が見えないのは心理的ハードルを下げてくれます。写真写りも自然で、矯正を打ち明けたくない人には大きな安心材料です。
スポーツや音楽演奏で口元を守れる
表側ワイヤーはボールや楽器のマウスピースが当たると唇を切りやすいですが、裏側はリスクが小さいためスポーツ選手や吹奏楽経験者にも選ばれています。
虫歯になりにくいという研究報告も
2023年のスウェーデン研究では、裏側矯正群の白斑(初期虫歯)発生率が表側より2割低いとの結果が出ています。理由は裏面のエナメル質が厚めで、金具周囲に唾液が循環しやすいからと推察されています。
デメリットと対策
舌に当たる痛み
金具に舌が当たり口内炎ができることがあります。矯正用ワックスを盛る、数日間は柔らかい食事にすることで多くの人が1〜2週間で慣れます。
発音トラブル
特に英語のl、r、t、d音が舌に当たりづらくなります。音読練習や「さ行」を意識して発音するトレーニングをすると一か月ほどで解消する人がほとんどです。
最新テクノロジーの進歩がすごい

- 超薄型ブラケット
1980年代は厚み3ミリ近くでしたが、現在は1.5ミリ程度。舌触りが格段に向上。 - 遠隔モニタリング
スマホで口内を撮影し、歯科医がオンラインで噛み合わせや装置のトラブルをチェック。多忙な社会人でも通院を1か月に1回へ延長できる例があります。
どんな人に向いている?
- 営業や接客、芸能など人前で話す仕事
- 抜歯が必要な中〜重度のデコボコをきれいにしたい
- 装置が見えるのだけは避けたいが、確実に治したい
- 歯みがきをきちんと続けられる自信がある
逆に、発音が命の声優やアナウンサー、舌の可動域が狭い人、歯みがきが苦手で虫歯が多い人は慎重な検討が必要です。
裏側矯正Q&A
Q 期間はどれくらい?
A 平均2年前後ですが、抜歯の有無や年齢で変動。部分的な裏側矯正なら1年程度で終わるケースも。
Q 食事制限はある?
A 1週間ほどは固いフランスパンやナッツは避けると安心。慣れたら基本的に何でも食べられますが、カラメルやキャラメルのように糸を引くお菓子は装置に絡みやすいため控えめに。
Q 保定はどうする?
A 装置を外したら昼夜で半年、その後は就寝時のみ1年以上マウスピース型リテーナーを装着。後戻り防止の要です。
まとめ 人知れず整えて堂々スマイル

裏側矯正は「見えない」という一番のメリットに加え、技術革新で痛みや期間も年々改善しています。費用は高いものの、笑顔のコンプレックスが解消される価値は大きいもの。
興味を持ったらまず矯正専門医でカウンセリングを受け、表側やマウスピースとの違いを比べてみましょう。あなたのライフスタイルに合う最適解が見つかれば、装置を気にせず日常を思いきり楽しめるはずです。