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よく噛む子は歯も育つ?噛む力と口腔発達の深い関係

よく噛む子は歯も育つ?噛む力と口腔発達の深い関係

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~現代っ子に増える“噛まない食生活”が与える影響とは~

「もっとよく噛んで食べなさい」
 子どもにそう声をかけたことのある保護者の方も多いのではないでしょうか。

実は、「噛む」という行為は、ただの食事動作ではありません。歯の成長、顎の発達、言語能力、姿勢、そして集中力にまで大きな影響を与える、非常に重要な要素なのです。

今回は、最新の研究や歯科医師の見解をもとに、噛む力と子どもの口腔発達との深い関係をわかりやすく解説します。


現代の子どもは“噛まなくなった”?

厚生労働省の国民健康・栄養調査によると、近年の子どもたちは柔らかい食べ物を好む傾向が強く、咀嚼回数が減っていることが指摘されています。

また、文部科学省の調査(学校給食における咀嚼回数比較)では、

  • 昭和50年代の児童:平均1食あたり約1400回の咀嚼

  • 平成30年代の児童:平均約620回に減少

という結果が示されており、約半分以下にまで噛む回数が減少していることがわかります。

この背景には、柔らかいパン・麺類・加工食品などの摂取増加や、食事時間の短縮化などが関係していると考えられています。


よく噛むことで得られる5つの効果

「よく噛む子は健康に育つ」と言われる理由には、科学的根拠があります。

噛むことで得られる効果解説
顎の発達を促す歯列のスペースが広がり、歯並びが整いやすくなる
唾液の分泌が増える虫歯予防や消化の助けになる
表情筋・舌の機能が鍛えられる発音・飲み込み・姿勢保持に好影響
脳の活性化学習能力や集中力の向上に関与するという研究も
満腹感を得やすくなる食べ過ぎ防止や肥満予防につながる

つまり、噛むこと=全身の健やかな発達の土台でもあるのです。


噛まないとどうなる?“噛む力不足”が引き起こす問題

一方で、咀嚼が不足している子どもには、以下のような問題が見られやすくなります。

問題内容
顎の発達不足小さな顎に歯が並びきらず、歯列不正(ガタガタ)が生じる
虫歯・歯周病のリスク増加唾液が少なくなり、口内が酸性に傾きやすい
嚥下障害や構音障害飲み込みや発音がうまくできず、言語発達に影響
姿勢が崩れる噛む力が弱いと口呼吸になり、猫背になりやすい
集中力の低下咀嚼が脳の活性化に関与していることがわかっている

特に近年は「口呼吸」が注目されており、噛む力の低下が呼吸や睡眠、免疫にも関係しているという報告も増えています。


歯科医師がすすめる「噛む力を育てる食べ方」

噛む力は、食材の選び方や食べ方を意識することで育てることができます。

ポイント1:食材は“繊維質”と“歯ごたえ”を意識

よく噛むための食材例特徴
ごぼう・れんこん・にんじん繊維質が多く、噛む回数が自然と増える
きのこ・こんにゃく弾力があり、咀嚼筋を鍛えやすい
肉類(薄切りではないもの)適度な抵抗があり噛み応えがある
干物・するめ水分が少なく、よく噛まないと飲み込めない

スナック菓子や柔らかいパンばかりに偏ると、噛む力は発達しません。

ポイント2:食事環境を整える

  • テレビを消して“食べること”に集中させる

  • 食卓で足がしっかり床につく椅子を使う

  • 家族で「30回噛もうゲーム」など、楽しい工夫を取り入れる

噛むことに意識を向けさせることで、自然と習慣化されていきます。


顎の成長と歯並びの関係は?

「歯並びが悪いのは遺伝」と思われがちですが、生活習慣や噛む力も大きな要因です。

以下は、歯並びと噛む力・顎の発育の関係を示した図です。

状況結果
よく噛む・硬いものを食べる顎骨が広がり、永久歯がきれいに並ぶスペースができる
あまり噛まない・柔らかいもの中心顎が小さくなり、歯が重なり合って生える(叢生)

特に乳歯期〜混合歯列期(3〜12歳)は、口腔機能の発達にとって極めて重要な時期です。今の食習慣が、将来の歯並びに直結するとも言えるでしょう。


噛む力を測る方法とチェックポイント

実は、子どもでも自宅で「噛む力が足りているか」をある程度確認できます。

噛む力セルフチェック(3つ以上当てはまると注意)

  • 食事中にすぐ飲み込む

  • 丸飲みしているように見える

  • 軟らかいものばかり好む

  • よく口を開けている(口呼吸)

  • 発音が不明瞭になりがち

  • よく頬杖をつく・姿勢が崩れがち

気になる場合は、小児歯科や口腔外科で**「咀嚼力検査」や「顎の成長評価」**を受けることも可能です。


まとめ:よく噛む習慣が、子どもの将来の健康をつくる

よく噛むことは、歯の健康だけでなく、顎の発育・表情筋・姿勢・発音・学習能力など、さまざまな側面に関係しています。


 「歯を磨いていれば大丈夫」ではなく、日常の“食べ方”こそが、歯の土台を作るのです。

今日からできること:

  • 1口30回を目安に、よく噛むことを意識

  • 繊維質や歯ごたえのある食材を食事に取り入れる

  • 食事時間を「噛む訓練」として活用

  • 子どもが楽しめる形で、噛むことを習慣化する

歯科医院での定期チェックと合わせて、「噛む力」を育てる生活習慣を、ぜひご家庭でも意識してみてください。健やかな歯と成長は、日々の小さな習慣から生まれます。

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