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指しゃぶり、噛みグセ…噛み合わせに影響する子どもの癖を徹底解説

指しゃぶり、噛みグセ…噛み合わせに影響する子どもの癖を徹底解説

「うちの子、いつも指しゃぶりしていて大丈夫?」「タオルの端を噛むクセがあるけど、歯並びに影響しないかな…?」
こうしたお悩みを抱える保護者の方は多いのではないでしょうか。実は、子どもが無意識にしている癖の中には、将来的な噛み合わせや歯並びに大きな影響を及ぼすものがあります。
学齢前の子どもの約40%以上に「指しゃぶりや舌癖、噛み癖などの習慣」が見られ、その一部が不正咬合(悪い噛み合わせ)の原因になっているといわれております。
今回は、子どもの歯と顎の成長に影響する癖について、なぜ悪影響があるのか、どのように対応すべきかを詳しく解説します。保護者として知っておきたいポイントを押さえて、正しい発育のサポートにお役立てください。


なぜ癖が噛み合わせに影響するの?

子どもの骨や歯はとても柔らかく、成長の途中段階にあります。そのため、日常的な力のかかり方が積み重なると、歯や顎の発育方向に影響を与えることがあります。
例えば、指を長時間しゃぶることで前歯が前に押し出されたり、舌で前歯を押す癖があると歯が開いて噛み合わなくなったりするなど、力の方向や頻度が歯列を形成する一因となります。

このような癖が原因で起こる不正咬合には、以下のような種類があります。

癖の種類主な影響代表的な症状
指しゃぶり上下の前歯の圧迫と突出開咬(上下の前歯に隙間ができる)
舌で歯を押す歯の前方突出、顎の発育の妨げ出っ歯、開咬
頬杖をつく顎の左右非対称、下顎のずれ交叉咬合(片側だけ噛み合わない)
唇を噛む癖歯列の圧迫、前歯の突出下の前歯が内側に倒れる
寝るときの姿勢特定方向の顎発育や筋肉の偏り顔のゆがみや左右差が出ることがある

よく見られる癖とそのリスクを深掘り

■ベッドから落ちないように注意をしながら撮影を行っています。

指しゃぶり

もっとも一般的な癖のひとつ。赤ちゃん期の指しゃぶりは自然な行動ですが、3歳を過ぎても頻繁に行っている場合は注意が必要です。

  • リスク:前歯が前に押し出される、顎の発育バランスが乱れる
  • 影響:開咬、上顎前突(いわゆる出っ歯)

日本小児歯科学会の見解では、4歳までに指しゃぶりをやめることが望ましいとされています。特に就寝中に長時間行っていると、無意識の力が継続してかかるため影響が大きくなります。

舌癖(舌で歯を押す、舌を前に出すなど)

言葉を話し始める頃に見られることがある癖ですが、舌の動き方が習慣化すると歯並びを乱す原因になります。

  • リスク:前歯を外側へ押す、歯と歯の間を舌が邪魔して噛み合わせが形成されない
  • 影響:開咬、発音障害(サ行・タ行の発音が不明瞭になることも)

言葉の発音や飲み込み方に異常が見られる場合は、歯科医とともに言語聴覚士の評価を受けることも選択肢となります。

頬杖・寝る姿勢

無意識のうちに行われる頬杖や、いつも同じ方向を向いて寝る姿勢も、顎の成長バランスに影響することがあります。

  • リスク:片側だけの筋肉や骨への圧力で非対称な発育
  • 影響:交叉咬合、顔面の左右差

成長期の子どもは、骨格が発達段階にあるため、片寄った力が継続的にかかることが顔つきや噛み合わせにまで影響を及ぼすことがあるのです。


癖を放置するとどうなる?成長への影響と治療の必要性

軽度の癖でも、頻度と持続時間によっては歯並びや顎の形に大きく影響します。歯列矯正が必要になることもありますし、顎関節症や発音障害、消化不良などに発展する可能性もあるため、軽視はできません。

影響の程度可能な対応
軽度保護者の声かけや環境整備で自然に改善するケースが多い
中程度歯科医院での経過観察、舌のトレーニングや生活習慣の見直しが必要
重度小児矯正やMFT(口腔筋機能療法)などの専門的な治療が必要になることも

保護者ができる対策と声かけの工夫

癖の改善には、子ども自身の意思と家族のサポートが不可欠です。無理にやめさせようとせず、少しずつ生活リズムや環境を整えていくことが大切です。

日常生活の中でできること

  • 眠る前に手を使わないルーティンをつくる(ぬいぐるみを持たせる、音楽を聴かせる)
  • 手を使う遊びを増やす(お絵かき、折り紙、粘土などで指しゃぶりを忘れさせる)
  • 舌を正しく使うトレーニングを取り入れる(口の中で舌を上顎につける練習など)
  • 声かけはポジティブに:「やめなさい!」ではなく、「お兄さんになったね!」といった前向きな言葉で

いつ歯科医院に相談すべき?

以下のような様子が見られたら、小児歯科を受診しましょう。

  • 3歳を過ぎても頻繁に指しゃぶりをしている
  • 前歯に隙間があり、噛み合わせがうまくできていない
  • 発音に不明瞭な部分がある(サ行・タ行など)
  • 片側だけで噛む傾向がある
  • 頬杖や口呼吸の習慣が続いている

歯科医院では、咬合状態のチェックや筋機能の評価、必要に応じて矯正の検討が行われます。


まとめ:癖は成長のチャンス。早めの気づきと声かけが未来の歯を守る

子どもにとっての癖は、成長過程で自然と起こることも多く、決して悪いものばかりではありません。ただし、長期間続く、頻度が高い、発育に影響しているといったケースでは、歯科的なアプローチが必要になることもあります。

  • 噛み合わせや歯並びの乱れは、日常のちょっとした癖から始まる
  • 指しゃぶり・舌癖・頬杖・口呼吸などには注意が必要
  • 保護者の理解とサポートで、無理なく改善できるケースがほとんど
  • 気になる症状があれば、早めに小児歯科で相談を

子どもの健やかな発育を守るために、「癖」にも優しく目を向けてあげましょう。歯並びとともに、心も身体もまっすぐ育つお手伝いができるはずです。

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