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出っ歯や八重歯はもう個性じゃない?整えるメリット・デメリット

出っ歯や八重歯はもう個性じゃない?整えるメリット・デメリット

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日本では昔から「八重歯はかわいい」「出っ歯はチャームポイント」といった価値観がありました。実際、1970年代〜90年代の芸能界では、八重歯タレントが「親しみやすさ」の象徴として人気を博した時代もありました。

しかし、現在では美の基準や健康意識の高まりにより、これらの歯並びを「整えるべきもの」と考える人が増えています。出っ歯や八重歯のままでよいのか、それとも矯正すべきなのか――今回はその判断材料として、審美面・健康面の両方からメリット・デメリットを解説していきます。


出っ歯・八重歯とは?それぞれの特徴と原因

まずは「出っ歯」と「八重歯」がどういう状態なのか、簡単に整理しましょう。

出っ歯(上顎前突)

上の前歯、または上顎全体が前方に突き出している状態を指します。日本人に比較的多く見られ、原因としては以下のようなものがあります。

  • 骨格的な上顎の突出
  • 指しゃぶり、舌癖(舌を前に押し出す癖)
  • 遺伝や口呼吸の習慣

八重歯(叢生・犬歯の低位唇側転位)

上顎の犬歯が歯列からはみ出している状態。顎のスペース不足が主な原因で、特に女性に多く見られます。日本では「八重歯=かわいらしい」という印象を持たれることもありますが、欧米では“ドラキュラの歯”と見なされるなど評価は異なります。

さらに、八重歯は噛み合わせの悪さから歯周病や顎関節症のリスクも高めるとされており、単なる見た目だけの問題ではないのです。


文化的な価値観の変化

ここで一度、日本と海外の「歯並び観」の違いを見てみましょう。

地域出っ歯・八重歯への評価
日本(昭和〜平成初期)個性・可愛らしさの象徴、特に八重歯に対して好意的
日本(近年)清潔感・対人印象の重要性から矯正への関心が高まる
欧米諸国歯列の美しさ=育ちやステータス、矯正は一般的

SNSやYouTubeなどでグローバルな表現が日常化している今、歯並びがもたらす印象はますます重視されています。多くの人が「美しい歯=信頼」「整った歯=品格」と感じるようになってきているのです。


矯正して整えるメリット

見た目だけでなく、機能面・健康面においても、出っ歯・八重歯の矯正には多くのメリットがあります。

1. 審美性の向上

歯並びが整うことで、笑顔が自然で美しく見えます。出っ歯の場合、唇が閉じやすくなることで横顔も整い、Eライン(横顔の美しいライン)が形成されやすくなります。

また、第一印象のアップや就職活動・接客業などでも「好感度が高い」とされ、社会的評価にも好影響を与えることがあります。

2. 発音の改善

歯の位置は「サ行」「タ行」などの発音にも影響します。特に出っ歯の方は空気の抜け方が変わることで不明瞭な発音になることもありますが、矯正によって改善されることがあります。

3. 虫歯・歯周病のリスク低下

八重歯などで歯が重なっていると、歯ブラシが届きにくくなりプラーク(歯垢)がたまりやすい環境になります。矯正によって歯磨きがしやすくなり、口腔内の清潔を保ちやすくなります。

4. 顎関節や咬合のトラブル予防

歯並びが悪いと咬み合わせに偏りが生じ、顎関節症や咀嚼障害の原因となることも。歯列のバランスを整えることで、こうしたリスクを軽減できます。

5. 精神的な自信につながる

多くの人が「笑うときに口元を隠していた」「写真が苦手だった」といったコンプレックスから解放されたと語っています。矯正は、自己肯定感を高める手段にもなり得るのです。


矯正によるデメリット・注意点

一方で、矯正にはコストや時間、治療中の不便さといった負担も伴います。

1. 費用がかかる

一般的な成人矯正は60〜120万円前後が相場。インビザラインなどのマウスピース矯正も普及していますが、保険適用外で高額になります。

子どもの場合は一部保険適用のケースもありますが、ほとんどの審美矯正は自由診療扱いです。

2. 治療期間が長い

平均して1年半〜2年半程度の治療期間が必要です。さらに治療後も後戻り防止のため、リテーナー(保定装置)を長期間使用する必要があります。

3. 痛み・違和感

ワイヤー矯正などでは、調整後に数日間の痛みが出る場合があります。また、食事や会話への影響も一時的に出ることがあります。

4. セルフイメージの変化

「八重歯が自分のアイデンティティだった」と感じる人にとって、整えることが“自分らしさ”の喪失と感じられる場合もあります。


矯正を考える際の判断ポイント

整えるかどうかの判断は、「誰かの目線」ではなく、自分の価値観と健康意識が基準になります。以下のチェックリストを参考にしてみてください。

チェック項目当てはまる場合は矯正を検討しても◎
口が閉じにくい出っ歯の可能性、唇や顎の筋肉に負担がかかる
歯磨きがしにくい八重歯や重なりで虫歯リスクが高い
咀嚼に偏りがある顎関節症や胃腸への負担に繋がることも
発音が不明瞭舌の位置や歯列による音声障害の可能性
自分の笑顔に自信がない精神的ストレスがあるなら前向きな改善に

“個性”として残すという選択もアリ

一方で、「整えない」という判断が間違いというわけではありません。出っ歯や八重歯がその人の表情や魅力の一部になっているケースもあり、医師の中には「無理に矯正しない方がいい」と判断する場合もあります。

特に近年は、過度な審美志向に対して「ナチュラルビューティー」や「自分らしさ」を大切にする声も高まっています。矯正を望まない場合も、口腔ケアや定期的なチェックを行うことで、健康面のリスクを最小限に抑えることは可能です。


まとめ:美しさも健康も“自分らしさ”から選ぶ時代へ

出っ歯や八重歯は、昔は「かわいい個性」とされてきましたが、現代では審美性と機能性の両面から整える価値が注目されています。

  • 美しい笑顔を手に入れたい
  • 清潔感や好印象を大事にしたい
  • 歯の健康を将来にわたって守りたい

そんな思いがあるなら、矯正治療はその実現を助けてくれる有力な手段です。一方で、個性として大切にする生き方も尊重されるべきです。

正解はひとつではありません。どちらを選ぶにしても、「知って、納得して選ぶこと」が一番大切なことなのです。

歯科医院では無料カウンセリングを行っているところも多く、専門家の意見を聞くことで選択肢が広がります。あなたにとってベストな“歯との付き合い方”を、ぜひ探してみてください。

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