子どもの歯に関するお悩みは、日々たくさんの保護者の方から寄せられます。「この時期で大丈夫?」「うちの子だけ変?」——そんな不安を感じたことのあるパパママも多いのではないでしょうか?
今回は、小児歯科の現場で実際によく受ける質問TOP5を取り上げ、歯科医の視点から科学的根拠とともにわかりやすく回答します。最新のデータや指導方針も踏まえながら、気になる疑問をすっきり解消していきましょう。
目次
1. 乳歯がなかなか生えてこないけど大丈夫?

多くの保護者が最初に気にするポイントが「いつになったら歯が生えるの?」という疑問です。
標準的な乳歯の生え始め時期
通常、生後6〜10か月頃に下の前歯(中切歯)が生えてくるのが一般的です。厚生労働省の「乳幼児身体発育調査」によれば、1歳を過ぎても歯が生えていない乳児は全体の5〜7%程度ですが、これは「遅い」わけではなく正常範囲とされています。
月齢 | 平均的な乳歯の本数 |
6か月 | 0〜2本 |
9か月 | 2〜4本 |
1歳 | 4〜8本 |
1歳6か月 | 8〜12本 |
2歳6か月 | 20本(すべての乳歯がそろう) |
遅れていても問題ないケースとは?
- 家族に「歯の生えるのが遅かった」人がいる(遺伝的傾向)
- 身長・体重の発達が順調で、他の発達段階に問題がない
一方で、2歳を過ぎてもまったく生えてこない場合や、一部の歯だけ極端に遅れている場合は歯科でのレントゲン診査が勧められます。
2. 指しゃぶりはいつまでにやめさせた方がいい?

「指しゃぶりは出っ歯になる」と耳にしたことがある方も多いでしょう。
指しゃぶりの影響
1〜2歳の頃の指しゃぶりは、心理的安心を得るための自然な行為です。しかし、3歳以降まで続くと歯並びや咬み合わせに影響を及ぼすリスクが高まります。
年齢 | 影響度 |
0〜1歳半 | 心配なし(自然な行動) |
2歳〜3歳 | 徐々に回数を減らしたい時期 |
3歳半以降 | 出っ歯・開咬・あごの変形のリスクあり |
歯科医のアドバイス
- 昼間の指しゃぶりをやめる→夜だけになる
- 指にテープを巻いたり、絵本で意識づけしたりして卒業へ導く
- それでもやめられない場合は、小児歯科で癖の強さや歯並びをチェックしてもらうと安心です
3. 歯みがきはいつから始めるべき?

「まだ歯が1本しかないから大丈夫?」と思う方もいますが、最初の乳歯が生えたその日からスタートするのが理想です。
歯みがきスタートの目安
- 生後6か月前後に下の前歯が生えてきたら、ガーゼで拭くケアから開始
- 1歳頃にはやわらかめの乳児用歯ブラシを使い、1日1回でもOK
- 2歳以降は朝晩の2回+仕上げみがきを習慣に
フッ素の活用は?
- 歯科医院でのフッ素塗布:1歳から可能。年2〜4回が推奨されます。
- 市販のフッ素入り歯みがき粉:年齢に応じて使用量を調整(うがいができない子は「米粒程度」)
年齢 | 使用量の目安 |
0〜2歳 | 米粒大(500ppm以下) |
3〜5歳 | グリーンピース大(500ppm) |
6歳以上 | 1〜2cm(1000〜1450ppm) |
4. 甘いお菓子やジュースはどれくらい与えていいの?

甘いものが虫歯の原因になるのは知られていますが、量よりも“頻度”が問題です。
虫歯リスクを高める習慣
- 飴やグミなど、長時間口に入っているおやつ
- ジュースを日常的に飲んでいる
- 就寝前や夜間に飲食をして歯みがきをしない
歯科医の提案:おやつルール
- 時間を決めて与える(ダラダラ食べを防ぐ)
- 1日1〜2回までが理想
- 甘い飲み物より水・お茶中心の水分補給を意識
厚生労働省の「幼児の食生活調査」によると、ジュースを頻繁に飲む子どもは虫歯経験率が1.8倍高くなるという報告もあります。
5. 歯並びが悪くなるのはいつからわかる?

「まだ乳歯だから…」と思われがちですが、実は3〜5歳の段階で将来の歯並びの兆候は見え始めています。
チェックすべきポイント
観察項目 | 注意したい症状 |
上下の前歯の噛み合わせ | 噛み合っていない(開咬)場合は注意 |
歯の生えるスペース | 歯がぎゅうぎゅうに並んでいると、永久歯で叢生の可能性 |
口呼吸・舌の位置 | いつも口が開いている、舌が前に出ているのは出っ歯のリスク |
歯並びに影響する要素
- 指しゃぶりや口呼吸の癖
- 咀嚼回数が少ない(やわらかい食事中心)
- 姿勢の悪さ(猫背・頬杖など)
小児矯正は早期に開始することで期間が短く、費用も抑えられることが多いため、気になったら一度歯科で相談するのがおすすめです。
まとめ:疑問をそのままにしないことが子どもの将来の歯を守る第一歩

子どもの歯に関する質問は、誰にでもある“当たり前の不安”です。
今回のQ&Aをまとめると次のようになります:
- 乳歯の生え始めは個人差があるが、2歳までに生えてこなければ歯科相談
- 指しゃぶりは3歳までにやめるのが理想的
- 歯みがきは最初の1本から、フッ素も活用して予防
- お菓子やジュースは“頻度”を管理することが大切
- 歯並びのサインは幼児期から、気になったら早めに歯科受診を
ちょっとした疑問を放置せず、正しい知識で早めに対応することが、将来の虫歯ゼロ・歯並びトラブル回避につながります。
子どもの健やかな笑顔のために、今日からできる一歩を踏み出してみましょう。どんな些細なことでも、歯科医院はいつでもパパママの味方です。