子どもが転んで顔をぶつけたとき、「歯が欠けた!」「前歯がグラグラしてる…!」と慌てた経験はありませんか?
実は、乳歯や永久歯のケガは幼児期から小学校低学年までに多く発生しており、正しい応急処置とその後の対応が、歯の予後に大きく影響します。
この記事では、子どもが歯をぶつけたときに保護者が知っておくべき応急処置、歯科での治療法、乳歯と永久歯の違い、受診のタイミングなどをわかりやすく解説します。
目次
歯の外傷はいつ・どこで起こる?

日本小児歯科学会の調査によると、3~6歳の間に歯の外傷を経験する子どもは約30%にものぼるとされています。
とくに「転倒・転落」「自転車や遊具での接触事故」「スポーツ中の衝突」が主な原因です。
外傷の多くは「前歯」で起きやすく、乳歯期は上の前歯、永久歯期は上顎中切歯(まんなかの2本)が頻繁に受傷します。
どんな症状がある?歯のケガの種類

子どもの歯の外傷には、見た目でわかりやすいものとそうでないものがあります。以下のように分類されます。
種類 | 症状・例 |
歯の欠け(破折) | 歯の一部が折れて欠損している。神経が露出して痛みを伴うこともある。 |
歯のぐらつき(亜脱臼) | 歯が動揺し、噛むと痛い。歯の位置がずれていることもある。 |
歯の完全脱臼 | 歯が完全に抜け落ちている。特に永久歯では迅速な対応が重要。 |
歯の変色 | 外傷後に歯が黒ずんできたら、神経が死んでいる可能性がある。 |
歯ぐきの腫れ・出血 | 外力による歯槽骨の損傷や歯肉の裂傷によるもの。 |
これらは一見、軽症に見えても、放置すると歯の変色や神経の壊死、歯の成長不全に繋がることがあります。
応急処置の正しい手順

ケガをした直後に保護者ができる対応は、歯の将来を守るうえで非常に大切です。以下の流れで冷静に対応しましょう。
1. 出血がある場合はガーゼで圧迫止血
清潔なガーゼやティッシュを使い、5分程度優しく押さえて止血します。
過度に口をすすがせると、出血が止まりにくくなるので注意しましょう。
2. 折れた歯の破片がある場合は保存する
歯のかけらが見つかった場合は、牛乳や生理食塩水、あるいは子どもの口内(舌の下)に入れて湿った状態で保存し、なるべく早く歯科を受診してください。
※水道水は避けましょう。歯の細胞が壊れてしまいます。
3. 完全に抜けた永久歯は「できれば元に戻す」
清潔な手で歯の「根」には触れず、元の位置に軽く戻して噛ませるのが理想です。難しい場合は、同じく湿った状態で保存し、30分以内の受診が望ましいとされています。
乳歯と永久歯で対応はどう違う?

比較項目 | 乳歯の場合 | 永久歯の場合 |
欠けた場合の処置 | 基本は経過観察。神経への影響次第で抜歯や修復。 | 積極的に修復(レジン・被せ物など)。 |
脱臼した場合 | 無理に戻さない。炎症や歯胚への影響を確認。 | できるだけ早く戻す or 保存し歯科へ持参。 |
抜けた歯の戻し | 基本的には戻さない(後続の永久歯に悪影響)。 | 条件が整えば再植。保存処置が重要。 |
乳歯はあくまで「生え変わる歯」ですが、その下には永久歯の芽(歯胚)が存在するため、処置を誤ると将来の歯並びに悪影響を与えることがあります。
歯科医院での治療内容

外傷の程度により、以下のような処置が行われます。
- 欠けた歯の修復(コンポジットレジンによる補修)
- 神経の保護や根管治療(破折が深い場合)
- 歯の位置の整復と固定(脱臼時)
- 抜歯(乳歯がぐらつき、自然回復が見込めない場合)
- 経過観察(変色や歯の成長への影響を確認)
とくに乳歯の破折や永久歯の脱臼は、定期的なレントゲン撮影とフォローアップが必須です。
すぐに歯科に行くべき症状とは?

以下のような状態では、緊急性が高いため即受診が必要です。
- 歯が完全に抜けた(とくに永久歯)
- 歯が折れて神経が露出している
- 歯ぐきや唇の出血が止まらない
- 歯が大きくグラついて噛めない
- 口を開けにくい、顎の骨折の疑いがある
逆に、軽微な欠けや歯の動揺が小さい場合は、翌日以降の受診でも差し支えないことがあります。
日常でできる予防策

子どもの歯のケガを防ぐために、家庭で心がけたいポイントを紹介します。
- 室内でのスリッパや靴下の滑り止めを確認
- 公園や遊具の使い方を大人が見守る
- 自転車・スポーツでは必ずヘルメットやマウスガードを着用
- フローリングや階段には滑り止めマットを敷く
予防と同時に、「いざというときどうするか」を家族で共有しておくことも重要です。
まとめ|子どもの歯の外傷には迅速かつ適切な対応を

子どもの歯のケガは、思いがけない瞬間に起こります。
しかし、正しい知識と冷静な対応ができれば、将来の歯や顎の発育を守ることが可能です。
- 欠けた歯や抜けた歯は適切に保存して歯科へ
- 乳歯と永久歯では処置が異なる
- 変色や違和感が数週間後に出るケースもあるため、定期的な経過観察が大切
親としては不安になる場面ですが、「知っていれば落ち着いて対処できる」のが応急処置の大きなポイントです。
万が一のときのために、この記事の内容をぜひブックマークや家族で共有しておいてください。