~放置すると歯並び・姿勢・学力にも影響が?~
電車や公園、教室などで「ぽかん」と口を開けている子どもを見かけることはありませんか?
この「おくちポカン」は、単なる癖ではなく口呼吸が原因となっている場合があり、歯並びや健康に悪影響を及ぼすことが近年明らかになってきました。
この記事では、口呼吸が子どもの歯並びや成長にどう関わるのか、早期に気づくためのチェックリストや対策について、専門的かつわかりやすく解説します。
目次
なぜ「おくちポカン」が問題視されるのか

本来、人間は鼻で呼吸をする「鼻呼吸」が正常な状態です。しかし近年、口呼吸の子どもが増加傾向にあります。
日本小児歯科学会の報告によれば、3〜12歳の子どものうち、約30〜40%が口呼吸の兆候を示しているとされています。これは、10人中3〜4人が“無意識に口を開けている”ということを意味します。
口呼吸が問題とされる理由は、以下のような多方面への悪影響があるためです。
影響範囲 | 内容 |
歯並び | 口の筋力低下や舌の位置異常により、不正咬合(出っ歯・受け口など)を引き起こす |
虫歯・歯周病 | 口腔が乾燥しやすく、細菌が繁殖しやすい環境になる |
姿勢 | 舌・あごの位置のズレにより猫背や反り腰を誘発 |
発音・滑舌 | 舌の動きが悪くなり、「サ行」「タ行」が不明瞭に |
学習能力 | 睡眠の質が下がり、集中力の低下につながるとされる |
「おくちポカン」は歯並びのサイン?

歯並びが乱れる原因はさまざまですが、「口呼吸と舌の位置の異常」はその中でも大きな割合を占めます。
通常、舌は上顎(口の天井)に軽くついているのが自然な状態ですが、口呼吸が習慣化すると舌が下がり、前方に突出しやすくなります。その結果、次のような歯列異常が生じやすくなります。
症状 | 影響 |
出っ歯(上顎前突) | 舌の圧が前歯を押し出し、口が閉じにくくなる |
開咬(かいこう) | 前歯が噛み合わず、発音や咀嚼に支障が出る |
受け口(反対咬合) | 顎の発育バランスが乱れ、見た目や噛み合わせに影響 |
歯列弓の狭窄 | 上顎の横幅が狭くなり、歯が並びきらずガタガタになる |
このように、口呼吸を放置することは、将来的な矯正治療の必要性を高める原因にもなるのです。
あなたのお子さんは大丈夫?口呼吸チェックリスト

以下のチェック項目に複数当てはまる場合、口呼吸の傾向があるかもしれません。
口呼吸セルフチェック(保護者向け)
チェック項目 | 該当 |
食事中に口を開けたまま咀嚼している | □ |
普段から唇が乾いている、口臭がある | □ |
鼻が詰まっていないのに、いつも口が開いている | □ |
寝ているときにいびきをかく、口が開いている | □ |
発音が不明瞭(特にサ行、タ行) | □ |
歯並びが気になる(出っ歯、開咬など) | □ |
口を閉じるとあごにしわがよる | □ |
唇を閉じる力が弱く、だらしない表情になる | □ |
3つ以上当てはまる場合は、歯科や耳鼻咽喉科での相談を検討しても良いかもしれません。
口呼吸の原因とその対策

口呼吸の原因は一つではありません。以下のように、生活習慣や身体的な要因が複雑に絡んでいます。
主な原因 | 対応策 |
鼻炎やアレルギー性鼻炎 | 耳鼻科での治療が優先 |
舌や唇の筋力不足 | 専門的な口腔筋機能療法(MFT)を実施 |
食事内容(やわらかすぎる) | 噛む力を育てる食習慣へ改善 |
姿勢の悪さ | 正しい座り方・生活習慣の見直し |
特に「口腔筋機能療法(MFT)」は、歯科医院で実施されており、舌の位置や口周りの筋肉の使い方をトレーニングで改善していく方法です。
鼻呼吸を促す家庭でのトレーニング方法

専門機関での治療と並行して、家庭でも以下のような習慣を取り入れると効果的です。
1. リップトレーニング
口を閉じたまま、唇を「んー」と力を入れて5秒キープ。1日5回程度繰り返すことで、**口輪筋(こうりんきん)**が鍛えられます。
2. ガム噛みトレーニング(学童期以降)
キシリトール入りガムを左右で均等に噛む練習を通して、噛む力や舌の動きを整えます。
3. 姿勢チェックと改善
食事中に足が床についていないと、正しく咀嚼できません。椅子や机の高さを調整することで、無理のない呼吸と噛み方が可能になります。
歯科でできる口呼吸対策

「おくちポカン」に気づいたら、小児歯科での早期相談が第一歩です。以下のようなサポートが受けられます。
- 口腔筋機能療法(MFT)プログラムの実施
- 歯列や顎の状態の診断(必要に応じて小児矯正を検討)
- 耳鼻科・小児科との連携による包括的ケア
医師の指導のもと、無理なく鼻呼吸へと導くサポートが期待できます。
まとめ:おくちポカンは「見逃せないサイン」

口が開いたままの状態は、一見かわいらしく見えても、将来の歯並び・呼吸・姿勢・学習などに多くのリスクを秘めています。
特に成長期の子どもにとって、口呼吸は身体の発達を妨げる重要な要因となり得ます。
この記事のまとめ:
- 「おくちポカン」は歯並びのサインの可能性あり
- 口呼吸は歯列不正や発音・姿勢・集中力低下など多方面に影響
- チェックリストで日常から異常に気づくことが大切
- 鼻呼吸への切り替えは家庭と歯科医院の両輪で行う
まずは、今日から「お口をしっかり閉じる習慣」づくりを意識してみましょう。
小さな変化の積み重ねが、お子さんの健康な未来につながります。