歯並びが気になるとき、真っ先に思い浮かぶのは全体をまるごと矯正する方法かもしれません。しかし、歯科の世界では、特定の歯やエリアだけを集中的に矯正する「部分矯正」という選択肢も存在します。
「前歯のほんの少しのズレだけが気になる…」「全体を矯正する予算がなくて踏み切れない」――そんな人にとって、部分矯正は費用や期間をぐっと抑えられる可能性があり、魅力的に映るのではないでしょうか。
とはいえ、すべての症例に適用できるわけではなく、メリットだけでなく注意点もあります。今回は、部分矯正の特徴やメリット・デメリットをわかりやすく整理し、どんな人が向いているのかを具体的にお伝えします。ぜひ、あなたの歯並びを改善するためのヒントとして役立ててください。
部分矯正とは?全体矯正との違い

特定の歯列だけ動かす矯正
一般的な矯正治療では、上下全体の歯並びや噛み合わせを総合的に改善しますが、部分矯正は特定の歯(主に前歯や軽度の歯列不正)だけを対象に行います。例えば、「上の前歯だけ」「下の前歯だけ」といった部分的なエリアに絞って装置を装着し、数本の歯の位置を整える方法です。
適用症例の範囲
- 軽度の出っ歯やすきっ歯
- 前歯のねじれやわずかなデコボコ
- 部分的にねじれた下の前歯 など
ただし、噛み合わせ全体に問題がある場合や、奥歯も含めた複雑な歯列不正では部分矯正が難しいことが多いのが現状。歯科医師の判断で「全体矯正が必要」と診断されるケースも少なくありません。
部分矯正のメリット

1.費用が抑えられる
治療する範囲が少ないため、全体矯正に比べて治療費が安くなる傾向にあります。具体的には、全体矯正が60〜90万円前後(またはそれ以上)かかるのに対し、部分矯正なら10〜50万円程度で済むこともあります。ただし装置の種類(ワイヤー矯正・マウスピース矯正など)や症例の難易度によって変動します。
2.治療期間が短い
全体矯正では1年半〜3年ほどかかるケースが多いですが、部分矯正では6か月〜1年程度で完了することが多く、早い症例では3〜4か月で結果が出る場合も。
短期間で前歯の隙間などを治したい人にとっては、大きなメリットと言えるでしょう。
3.比較的負担が軽い
治療範囲が限られる分、装置の装着も少なく、調整回数も少なめになる傾向があります。そのため、痛みや違和感が軽減されることや、通院回数が少なくて済む点も評価されています。
部分矯正のデメリットや注意点

1.適用範囲が限られる
部分矯正では、「歯並びの問題が軽度」「奥歯のかみ合わせに問題がない」「上下の顎の大きなズレがない」といった限定的な条件が必要なことが多いです。
噛み合わせの大幅な改善を要するケースや、重度の叢生(デコボコ)、骨格性の問題がある場合は、残念ながら全体矯正が必須となります。
2.噛み合わせや骨格の問題が解決しない可能性
「前歯の見た目」だけを治せても、奥歯の噛み合わせが乱れているままだと、将来的に歯周病や顎関節症などを招くリスクが残ります。部分矯正で歯が正しい位置に並んでも、咬合バランスの不調和があると長期的に見てデメリットが大きい場合も。
3.後戻りが起きやすいケースも
部分矯正後も、リテーナー(保定装置)の装着が重要です。しかし、全体の歯並びと噛み合わせを調整していない分、周囲の歯や咬合力の影響を強く受ける可能性があります。
適切な保定ケアを怠ると、せっかく矯正した歯が元に戻る「後戻り」が起きやすくなるので要注意です。
部分矯正の主な治療方法と特徴
治療法 | メリット | デメリット | 適用範囲 |
---|---|---|---|
ワイヤー矯正(部分) | 歯のコントロールがしやすい 細かい角度調整が可能 比較的短期間で結果が出やすい | 装置が表に出る場合は目立つ 痛みや違和感が出る場合がある | 軽度〜中程度の歯列不正 |
マウスピース型 | 見た目が目立ちにくい 取り外し可能で衛生的 | 自己管理が必要(装着時間を守らないと効果薄) 適用症例に制限あり | 軽度〜中程度の前歯のズレなど |
裏側矯正(部分) | 表から装置が見えない 歯の裏側に装置を付けるため審美的 | 舌に干渉しやすく、発音に影響 費用が高めで装着に高度な技術を要する | 軽度〜中程度の前歯のズレなど(症例による) |
こんな人におすすめ!部分矯正が向いている例
- 前歯だけがわずかにズレている
前歯のすき間(すきっ歯)やねじれが軽度な場合、数本の歯のみ矯正で短期間で改善できる。 - 矯正費用を抑えたい
全体矯正ほど大がかりな装置や長期治療が必要ないため、予算面での負担が少ない。 - 奥歯のかみ合わせは問題ない
奥歯や左右の顎が正しく噛み合っているなら、前歯の部分的な調整でも完成度の高い仕上がりが期待できる。 - 結婚式やイベントまでに間に合わせたい
短期集中で見える部分の歯並びを整え、写真や人前での印象をアップさせたい。
具体的な費用感と治療期間の目安

実際の費用や期間は歯科医院や症例の難易度によって異なりますが、大まかな目安として参考にしてください。
項目 | 全体矯正 | 部分矯正 |
---|---|---|
費用 | 60〜120万円以上 | 10〜50万円前後 |
治療期間 | 1年半〜3年ほど | 3〜12か月程度 |
通院頻度 | 月1回の調整 | 月1回の調整 |
リテーナー期間 | 1年〜2年以上 | 6か月〜1年程度 |
注意したい点:後戻りリスクとアフターケア
部分矯正で大切なのは、治療後のアフターケアです。
- リテーナー(保定装置)の装着
- 定期検診で歯の位置や噛み合わせをチェック
- 生活習慣(歯ぎしりや食生活)を見直す
特に注意すべきは、後戻り。部分矯正では噛み合わせを根本から変えるわけではない場合が多いため、歯にかかる力の方向が従来とあまり変わらないことも。
そのため、歯科医師が指示する期間は必ずリテーナーを装着し、少しでも歯が動いたら早めに相談するなど、こまめなケアが必要です。
部分矯正を検討する際の流れ

- カウンセリング
自分の歯並びの悩みや希望、予算を歯科医師に伝え、全体矯正か部分矯正かの適否を確認。 - 検査・診断
レントゲンやCTスキャン、口腔内写真で骨格や歯列の状態を把握。 - 治療計画の説明
どの部分をどう動かすか、費用や期間、リスクを含めた詳細なプランニングを確認。 - 装置の作製・装着
ワイヤーやマウスピースなど、選んだ方式で部分矯正をスタート。 - 定期調整
月1回程度のペースで通院し、経過を観察・調整。 - 保定期間
目的の位置に歯が収まったら、リテーナーで保定。定期的なチェックを続ける。
まとめ:費用と期間を抑えたいなら部分矯正も選択肢に!しかし適用範囲に注意

「費用も期間も抑えたい!知っておきたい部分矯正のメリットとデメリット」と題して、部分矯正がどんな治療なのかを見てきました。前歯だけのズレや軽度の歯列不正なら、比較的短期間・低費用で歯並びを整えられる可能性があります。
メリット
- 費用が安く、治療期間が短い
- 装置の装着範囲が小さく、負担が少ない
デメリット
- 奥歯の噛み合わせは改善されない場合が多い
- 適用できる症例が限定的
- 後戻りリスクがあるので、アフターケアが重要
部分矯正を検討するなら、自分の歯並び・噛み合わせの状態が部分的な矯正で解決可能かどうかを歯科医師にしっかり診断してもらいましょう。もし前歯のわずかなズレで悩んでいるなら、部分矯正で大きな効果が得られるかもしれません。
一方、噛み合わせや骨格に問題がある場合は、全体矯正が必要になるケースも多いので、カウンセリングの際にしっかりと相談しましょう。
あなたが求める歯並びや予算、ライフスタイルに合わせて最適な矯正方法を選び、一生もののキレイな笑顔を手に入れてください。歯科医師とのコミュニケーションを大切に、安心できる治療を受けることが、口元のコンプレックスから解放される第一歩です。