「口を開けるとカクッと音がする」
「朝起きると顎がだるい」「硬いものを噛むと痛む」
そんな症状を感じていませんか?
それは「顎関節症(がくかんせつしょう)」のサインかもしれません。
顎関節症は、20〜40代の女性に特に多く、現代人の約3割が何らかの症状を持っているといわれています。
一見、口だけの問題のように見えますが、放置すると頭痛・肩こり・姿勢の歪みにもつながることがあります。
この記事では、顎関節症の原因やセルフチェック方法、症状別の対処法までを、わかりやすく徹底解説します。
目次
顎関節症とは?「顎の関節と筋肉のトラブル」

顎関節症とは、顎の関節(耳の前あたりにある顎関節)や、咀嚼に関わる筋肉の異常によって起こる総称です。
正式には「顎関節症候群」と呼ばれ、次のような症状が現れます。
- 顎を動かすと「カクッ」「ミシッ」と音がする
- 口が開けにくい、または開けると痛い
- 顎やこめかみがだるい
- 朝起きると顎が疲れている
- 噛み合わせに違和感がある
これらの症状は一時的に軽くなることもありますが、放置すると慢性化し、関節自体が変形することもあります。
顎関節症の主な原因

顎関節症の原因は1つではなく、複数の要素が重なって発症します。
下の表に主な原因をまとめました。
| 原因 | 内容 | 特徴 |
| ストレス | 無意識の食いしばり・歯ぎしりを誘発 | 就寝中や仕事中に多い |
| 噛み合わせのズレ | 歯の高さや位置の不均衡 | 顎の動きに偏りが生じる |
| 姿勢の悪さ | 前傾姿勢が顎に負担をかける | デスクワーク・スマホ使用時に多い |
| 外傷 | 顎への衝撃・打撲 | 急性の痛みを伴う |
| 習慣 | 頬杖・片噛み・硬いものを好む | 顎の筋肉が片側だけ発達 |
| 精神的要因 | 緊張・不安 | 筋肉が過緊張状態になる |
近年では、マスク生活による姿勢の悪化やストレスによる無意識の食いしばりも増加要因とされています。
顎関節症のタイプ別特徴

顎関節症には大きく分けて4つのタイプがあり、症状の出方が異なります。
| タイプ | 主な原因 | 症状の特徴 |
| 筋肉タイプ | 顎を動かす筋肉の疲労 | 噛むとだるい・朝に強い痛み |
| 関節円板タイプ | 関節内のクッションがずれる | カクカク音・開閉制限 |
| 骨変形タイプ | 関節の骨自体の変化 | 慢性的な痛み・左右差 |
| 心因性タイプ | ストレスや緊張 | 痛みの部位が一定しない |
このうち最も多いのが「関節円板タイプ」で、関節内の軟骨(関節円板)が前にずれてしまうことで“カクッ”という音が生じます。
顎関節症のセルフチェック

簡単にできるセルフチェックで、自分の顎の状態を確認してみましょう。
1.口を開けたときに3本指(人差し指・中指・薬指)が縦に入るか
2.開けるときに顎が左右に揺れる、または音がする
3.朝起きたときに顎や頬の筋肉がこわばっている
4.食事中、片側で噛むクセがある
5.肩こり・頭痛・耳の奥の痛みがある
2つ以上当てはまる場合、顎関節症の可能性があります。
特に「音がする」だけでも、早期に歯科・口腔外科の受診をおすすめします。
放置するとどうなる?進行による変化

顎関節症は自然に治ることもありますが、放置すると以下のような問題に進行することがあります。
| 進行段階 | 状態 | 主な症状 |
| 軽度 | 筋肉のこり・音がする | 痛みは軽いが違和感あり |
| 中等度 | 関節円板がズレ始める | 開けにくい・クリック音 |
| 重度 | 関節の変形・炎症 | 顎が開かない・慢性的な痛み |
| 慢性化 | 顎の動きが制限される | 生活に支障が出る |
「音がするだけだから大丈夫」と放置すると、関節円板が完全にずれて“口が開かなくなる(ロック)”こともあるため注意が必要です。
顎関節症の治療法と対処法

顎関節症の治療は、痛みの程度や原因に応じて段階的に行われます。
| 治療法 | 内容 | 効果 |
| スプリント療法 | 就寝時にマウスピースを装着 | 食いしばりを防止・関節の安定 |
| 理学療法 | 顎の筋肉を温めたりマッサージ | 血流改善・筋肉の緊張緩和 |
| 姿勢改善 | 首・肩・背中のストレッチ | 顎への負担軽減 |
| 薬物療法 | 鎮痛剤や筋弛緩薬を使用 | 痛みのコントロール |
| 矯正・補綴治療 | 噛み合わせのバランスを調整 | 再発予防・長期安定 |
軽症のうちは「スプリント療法」と「生活習慣の見直し」で改善するケースがほとんどです。
手術を要するケースはごく一部に限られます。
自宅でできる顎関節ケア

医師の指導のもとで行う「セルフケア」も、改善に大きく役立ちます。
1. 顎のストレッチ
・口をゆっくり開けて5秒キープ → ゆっくり閉じる
・1日3セットを目安に行う
2. ホットタオルで温める
温めることで血流が良くなり、筋肉のこわばりを解消できます。
3. 食いしばりを防ぐ意識づけ
デスクワーク中に歯を食いしばっていないか注意しましょう。
“上下の歯を離す”ことを意識するだけでも負担を減らせます。
顎関節症と全身の関係 ― 姿勢・呼吸との意外なつながり

顎関節は頭蓋骨と下顎をつなぐ「身体のバランス軸」の一部でもあります。
そのため、顎のズレは首や肩の筋肉にも影響を与えます。
- 頭が前に出る「スマホ首」 → 顎が後ろに引かれ負担増
- 口呼吸 → 舌が下がり顎の動きが制限される
- 食いしばり → 首の緊張・偏頭痛
このように、顎関節症は「全身の姿勢の乱れ」と深く関係しています。
歯科と整形外科が連携して治療を行うケースも増えています。
顎関節症を予防する生活習慣

顎関節症は、日常のちょっとした意識で防ぐことができます。
| 予防ポイント | 解説 |
| 歯を食いしばらない | 上下の歯は常に1mmほど離す意識を持つ |
| 柔らかいものばかり食べない | 顎の筋肉を使うことでバランスを保つ |
| 長時間のスマホ使用を控える | 姿勢を意識し、顎への負担を減らす |
| 寝る姿勢を整える | 横向き寝より仰向け寝が理想 |
| ストレスケアを行う | 深呼吸や軽い運動でリラックスを保つ |
日常動作の積み重ねが、顎の健康を守る最大のポイントです。
まとめ:顎の「カクカク音」は体のSOSサイン

顎関節症は、放っておくと悪化しやすい疾患です。
痛みや音が出るのは、身体が発している“早めにケアしてほしい”というサイン。
- 顎の音・痛み・だるさは早期受診が鍵
- 姿勢・食いしばり・ストレスに注意
- スプリント療法や生活改善で多くは改善できる
「少し気になる」段階で歯科医院に相談することが、将来の顎トラブルを防ぐ最善策です。
顎をいたわる習慣を今日から取り入れて、健康で自然な笑顔を守りましょう。