「歯石取りをしたあと、冷たい水がしみるようになった」
「歯医者に行った直後だけ痛いのはなぜ?」
スケーリング(歯石取り)を受けた多くの人が感じるのが、この“しみる”という症状です。
一時的なことが多いものの、なぜこのような現象が起こるのでしょうか?
この記事では、歯石を取った後にしみる理由と、症状を軽減するための正しいアフターケアについて、詳しく解説します。
目次
歯石が歯を「守ってしまっていた」からしみる

歯石は歯垢が硬くなった石のような物質で、本来は歯周病や口臭の原因となる厄介者です。
しかし歯石は、歯の表面を覆う“硬い壁”でもあるため、取り除かれた直後は歯の露出面が急に増えます。
これが、しみる最大の理由です。
歯石除去後にしみる理由
| 原因 | 説明 |
| 歯根が露出する | 歯石が隠していた部分が急に外に出る |
| エナメル質が薄い部分が露出 | 冷刺激に敏感になる |
| 歯ぐきが少し下がっていた | 歯根の象牙質が刺激に反応 |
| 歯周ポケットがいったん浅くなる | 内部の細胞が外気や水に触れる |
歯石がある状態は不健康ですが、「石の壁」が刺激を遮断していた点では一時的に“守られていた”状態でもあります。
それが取り除かれたことで、しみやすくなってしまうというわけです。
歯がしみやすくなるのはどんな人?

以下に当てはまる人は、歯石除去後にしみやすい傾向があります。
□ 歯ぐきが下がっている
□ 冷たい物や歯磨きでもしみることがある
□ 以前、知覚過敏と診断された
□ 歯周病の治療を進めている
□ 歯石が多く、長期間除去していなかった
歯ぐきが下がると歯の根元にある「象牙質」が露出しやすく、象牙質は冷水・温度差・風に敏感に反応します。
歯石を取ると歯ぐきが下がるのは本当か?

「歯石を取りすぎると歯ぐきが下がる」という声を耳にすることもありますが、
これは誤解です。
正しくは、
歯ぐきが下がるのではなく、
既に下がっていた歯ぐきのラインが“見えるようになる”だけです。
歯石が歯ぐきと歯の間に入り込んでいたため、
膨れたように見えていた歯ぐきが、歯石除去で本来の位置に戻るだけなのです。
しみる症状はどれくらい続く?

多くの場合、数日〜1週間程度で落ち着きます。
象牙質の表面が唾液によって保護されていき、外部刺激に慣れてくるためです。
ただし、以下に該当する場合は長引くこともあります。
- 歯根が大きく露出している
- 歯周病が進んでいる
- 食いしばりが強く、歯根に負担がかかっている
- 歯磨きが強すぎる
- 酸性の飲食が多い
こうした場合は、知覚過敏が慢性化している可能性もあります。
歯石除去後にしみたときの正しいアフターケア

歯科医院で治療を受けた後こそ、セルフケアでの保護が重要です。
冷たい飲食物を控える(2〜3日)
アイス、水、炭酸水、冷たいお茶などはできるだけ避け、
常温か温かい飲み物に切り替えましょう。
知覚過敏用の歯磨き粉を使用する
カリウムイオン・乳酸アルミニウム・硝酸カリウムなどが含まれる歯磨き粉は、
象牙質の入口をふさいで刺激をブロックしてくれます。
代表的な成分と効果:
| 成分 | 効果 |
| 硝酸カリウム | 神経の痛みを伝えにくくする |
| 乳酸アルミニウム | 象牙細管をふさぐ |
| 高濃度フッ素(1450ppm) | 表面を強化し、再石灰化を促進 |
知覚過敏用の歯磨き粉は、数日〜数週間使い続けると効果が出ます。
歯を強く磨かない
強く磨くほど、象牙質が露出しやすくなります。
柔らかめの歯ブラシで、毛先を軽く当てるだけで十分です。
ポイント:
- 歯ぐき方向から下へ払う
- 横磨きはしない
- 歯ブラシの持ち手は“ペン持ち”で力を抑える
酸性の飲食物を避ける
酸は歯を溶かし、しみる原因になります。
避けたいもの:
- 柑橘類
- スポーツドリンク
- ワイン
- 炭酸水
- 酢系の食品
摂る場合は、食後に水で口をゆすぎましょう。
マウスピースを使って食いしばりを軽減
食いしばりが強いと、歯の根元に圧力がかかり、知覚過敏が悪化します。
就寝中にナイトガードを使用するだけで、歯の表面が守られます。
歯科医院でできる知覚過敏の治療

症状が強い場合、歯科では次のような処置を行います。
フッ素塗布
表面の再石灰化を強化し、刺激を受けにくくする。
コーティング剤による保護
象牙質の表面に薄い膜を作り、刺激を遮断する。
レーザー治療
痛みの伝達を和らげ、象牙細管を封鎖。
これらは短時間で終わる処置であり、しみる症状を早く軽減できます。
まとめ:しみるのは“正常な反応”であることが多い

- 歯石が歯の表面を覆っていたため、除去後に露出してしみやすくなる
- 多くの場合は数日〜1週間で改善
- 知覚過敏用歯磨き粉・冷刺激の回避が効果的
- 歯ぐきが下がったように見えるのは、本来の状態が見えているだけ
- 症状が続く場合は歯科での追加ケアを受けると早期改善
歯石取り後の“しみ”は、多くの場合「歯ぐきが健康に戻り始めた証拠」です。
ただし、正しいセルフケアを行うことで症状はぐんと軽減できます。