寝ているときに「ギリギリ」「カチカチ」と歯をこすり合わせる音が気になったことはありませんか?
子どもの歯ぎしり(ブラキシズム)は決して珍しいことではなく、日本小児歯科学会の調査によれば、3歳〜12歳の子どもの約30〜40%に見られると報告されています。
「そのうち治るだろう」と放置されがちですが、実は放置すると歯や顎、全身の健康に影響を与える可能性があるのです。
今回は、子どもの歯ぎしりの原因やリスク、改善方法を専門的な視点から解説します。
目次
子どもの歯ぎしりとは?

歯ぎしりは、睡眠中や覚醒時に上下の歯を強くこすり合わせたり、噛みしめたりする習慣のことを指します。
医学的には「ブラキシズム」と呼ばれ、以下の3タイプに分類されます。
- グラインディング型:ギリギリと強くこすり合わせる
- クレンチング型:強く噛みしめる
- タッピング型:カチカチと歯を打ち鳴らす
子どもでは特にグラインディング型が多く、寝ている間に音で気づかれることが多いのが特徴です。
子どもの歯ぎしりの主な原因

歯の生え変わり
乳歯から永久歯への生え変わり時期は、噛み合わせが安定しません。
このとき無意識に歯をこすり合わせて位置を調整することがあり、一時的な歯ぎしりにつながります。
顎の成長
顎の骨は成長期に大きく変化します。発育に伴う違和感を解消しようとして、歯ぎしりをすることがあります。
ストレスや心理的要因
幼稚園や学校生活の緊張、家庭環境の変化など、子どもなりのストレスが歯ぎしりとして現れることがあります。
日本小児心身医学会の報告では、心理的ストレスと歯ぎしりには一定の関連があるとされています。
習慣・癖
日中に強く噛みしめる癖があると、睡眠中も歯ぎしりが起こりやすいとされています。
歯ぎしりを放置するとどうなる?

歯の摩耗
強い力でこすり合わせることで、歯の表面(エナメル質)が削れていきます。
乳歯は永久歯よりも柔らかいため、摩耗が進みやすく注意が必要です。
顎関節への負担
長期間続くと顎の関節に負担がかかり、口を開けにくい、顎が痛いといった「顎関節症」のリスクが高まります。
噛み合わせの異常
歯ぎしりによる摩耗や歯の動きで、噛み合わせが不安定になることがあります。
これは永久歯列の形成にも影響を及ぼす可能性があります。
睡眠の質の低下
歯ぎしりは体の緊張反応の一つであり、繰り返されることで睡眠の質が下がることがあります。
日中の集中力低下や疲労感にもつながる恐れがあります。
子どもの歯ぎしりと大人の歯ぎしりの違い

項目 | 子ども | 大人 |
主な原因 | 歯の生え変わり、顎の成長、心理的ストレス | ストレス、噛み合わせ不良、生活習慣(喫煙・飲酒など) |
頻度 | 約30〜40%に見られる | 約10%前後に見られる |
放置リスク | 歯や顎の成長に影響する可能性あり | 歯の破折や顎関節症のリスク大 |
改善の見込み | 生え変わり終了後に自然に減少することが多い | 放置すると慢性化しやすい |
子どもの歯ぎしりは一時的な場合もありますが、成長や噛み合わせに悪影響を及ぼすケースもあるため、注意深く見守る必要があります。
受診の目安
以下のような場合は、早めに歯科を受診しましょう。
- 歯が大きく削れている、欠けている
- 朝起きたときに顎が痛い、口が開けにくい
- 歯並びや噛み合わせが明らかに乱れてきた
- 歯ぎしりの音が非常に大きく、毎晩続いている
改善方法

マウスピース(ナイトガード)
歯科医院で作るマウスピースは、歯の摩耗を防ぎ、顎への負担を軽減します。
ただし成長期の子どもは歯列が変化するため、定期的な作り直しが必要です。
歯並びの治療
噛み合わせが原因の場合は、矯正治療が検討されます。
小児期から行うことで将来の歯列不正を予防できることがあります。
ストレスケア
生活環境を整え、ストレスを減らすことも大切です。
リラックスできる就寝前の習慣(絵本の読み聞かせ、深呼吸など)が役立ちます。
生活習慣の改善
就寝前のカフェイン摂取を避ける、規則正しい睡眠習慣を整えるなど、生活習慣の見直しも効果的です。
自宅でできる観察・サポート方法
- 定期的に歯の摩耗や欠けをチェックする
- 顎やこめかみに痛みがないか確認する
- 強い歯ぎしりが続くようであれば動画で記録し、歯科で見せる
- 成長や生活の変化に伴い様子が変わるので、記録をつけておくと診断に役立つ
子どもの歯ぎしりを正しく理解しよう

歯ぎしりは「成長の一部」として自然に消えることもあります。
しかし、放置すると歯の摩耗や顎関節症、噛み合わせの問題につながることもあるため注意が必要です。
歯科医師や小児歯科専門医に相談し、必要に応じてマウスピースや矯正、生活指導を受けることで、子どもの健やかな成長をサポートできます。
まとめ

- 子どもの歯ぎしりは3〜12歳で約30〜40%に見られる
- 主な原因は歯の生え変わり、顎の成長、ストレスなど
- 放置すると歯の摩耗や顎関節症、噛み合わせの異常につながる
- 成長とともに改善することもあるが、強い症状は歯科受診が必要
- マウスピース、矯正、生活習慣改善などで対応可能