「痛くないよ」「ちょっと見るだけだからね」
——子どもを安心させるつもりで、つい言ってしまうこの言葉。
しかし実は、こうした“優しいつもりの声かけ”が、
子どもの歯医者嫌いを深めてしまう原因になることがあります。
この記事では、小児歯科の現場でよく見られる「NGな声かけ」と、
子どもが安心して治療を受けられる正しい声かけ方を紹介します。
目次
なぜ「歯医者が怖い」と感じる子が多いのか

子どもが歯医者を嫌がる理由は、痛みよりも“未知への不安”です。
初めての場所・独特のにおい・機械音・白衣の人たち——
これらすべてが、子どもにとって緊張の原因になります。
さらに、親が緊張していたり、「痛くないよ」と繰り返すと、
「痛いことをされるのかも」と察してしまうのです。
つまり、子どもの恐怖心は“言葉”ではなく“空気”から生まれます。
歯医者前にしてはいけない「NG声かけ」一覧

| NGワード | 子どもの受け取り方 | 問題点 |
| 「痛くないよ」 | “痛いかもしれない”と連想する | 嘘だった場合、信頼を失う |
| 「泣かないでね」 | “泣くようなことが起きる”と構える | 不安を助長する |
| 「いい子にしてないと怒られるよ」 | “先生は怖い人”と思い込む | 医療者への信頼が崩れる |
| 「すぐ終わるから」 | “早く終わってほしい怖いこと”と感じる | 治療時間への焦りを生む |
| 「見るだけだから」 | 実際に治療があると“裏切られた”と感じる | 歯医者への不信感が残る |
親が安心させようとする言葉が、
結果的に「怖いことが起こる前触れ」として伝わってしまうのです。
NG声かけがもたらす“心理的副作用”

1.歯医者=怖い場所という刷り込み
→ 以降の通院すべてで拒否反応が出やすくなる。
2.嘘をつかれたと感じる信頼喪失
→ 「親も先生も信用できない」と感じるように。
3.将来的な“受診拒否”につながる
→ 痛くなっても我慢し、虫歯が悪化するケースも。
歯医者を「怖い記憶」で終わらせると、
大人になってからも“歯医者嫌い”が続く可能性が高まります。
子どもを安心させる「OK声かけ」とは?

歯医者前にかけたい言葉は、“事実+安心感”を伝えるものです。
嘘をつかず、体験を前向きにイメージできるよう導くのがポイントです。
| シーン | NGな声かけ | OKな声かけ |
| 出発前 | 「泣かないでね」 | 「今日はお口をピカピカにしようね」 |
| 治療前 | 「痛くないよ」 | 「先生が優しく見てくれるよ」 |
| 待合室で | 「すぐ終わるから」 | 「どんな音がするか聞いてみようね」 |
| 終了後 | 「泣かないでえらかったね」 | 「頑張ってお口きれいにできたね」 |
子どもは「痛み」よりも、「どんなことをされるのか」が知りたいのです。
“何をするか”“どう感じるか”を具体的に説明する方が、はるかに安心します。
歯医者が教える!子どもが安心する「説明のしかた」

1. 見通しを伝える
「今日はお口のバイキンを見て、ピカピカにするよ」
→ 何をされるかがわかると、恐怖が減ります。
2. 擬音でやさしく表現
「ちょっと“ピュー”って風が出るよ」「お水がシャワーみたいに出るよ」
→ 難しい言葉を使わず、音で楽しく説明する。
3. 感情を否定しない
「怖いよね。でも一緒に頑張ろう」
→ “我慢を強いる”より“共感する”ことで信頼関係が深まります。
歯医者側も「楽しく通う工夫」をしている

最近の小児歯科では、怖くない治療体験づくりが進んでいます。
- 治療器具を「見せてから使う」
- 治療前に“練習タイム”を設ける
- 治療後にごほうびシールを渡す
- 親子で入室し、安心感をサポート
つまり、親が過剰に「頑張れ」「怖くないよ」と言わなくても、
歯科医院側が子どもを自然に慣れさせる仕組みを持っているのです。
親ができる“前日からの準備”3ステップ

1.ポジティブな話題で導く
→ 「先生にお口をピカピカにしてもらおう!」
「どんな椅子か楽しみだね!」
2.遊び感覚で練習する
→ 家で「お口をあーん」「歯ブラシでトントン」などのごっこ遊びを。
3.治療後の“ごほうび”を小さく設定する
→ 「絵本を読もう」「公園に寄ろう」などの前向きな約束で達成感を。
歯医者に付き添うときの注意点

- 治療中に「痛くない?」などと声をかけない
→ 子どもの集中が途切れ、不安が再燃します。
- 医師や衛生士の指示に合わせてサポート
→ 親と歯科スタッフの連携が、安心感を生みます。
- 兄弟姉妹と比べない
→ 「お姉ちゃんは泣かなかったのに」は逆効果です。
まとめ:言葉一つで“歯医者嫌い”にも“歯医者好き”にもなる

- 「痛くない」「見るだけ」は子どもの不安を強める言葉
- “事実+安心”を伝える声かけが信頼を育てる
- 歯科医院は子どもが怖がらない工夫をしてい
- 親の役割は「励ます」より「共感して寄り添う」
歯医者嫌いの原因は、子どもの性格ではなく“言葉の選び方”かもしれません。
ほんの少し伝え方を変えるだけで、
お子さんが歯医者を「怖い場所」から「楽しいお口ピカピカの場所」に変えることができます。