歯科医院で「歯周ポケットが深くなっていますね」と言われたことはありませんか? 一見なんともなさそうな言葉ですが、実はこれ、歯の健康にとって非常に重要な警告サインなのです。
この記事では、歯周ポケットが深くなることで起こるリスクや、なぜ早期対応が必要なのか、放置することで起こり得る口腔内外のトラブルについて詳しく解説していきます。
目次
歯周ポケットとは?

歯と歯ぐきの境目には、もともと1〜2mm程度のすき間(溝)があります。これが「歯周ポケット」と呼ばれる部分です。
健康な歯ぐきであればこの溝は浅く、歯垢(プラーク)も自然に取り除きやすいのですが、歯周病が進行するとこの溝がどんどん深くなり、細菌が繁殖しやすい「感染源」となってしまいます。
歯周ポケットの深さと状態の目安
歯周ポケットの深さ | 歯周病の進行度 | 状態の目安 |
1〜2mm | 健康 | 問題なし |
3〜4mm | 軽度歯周炎 | 歯ぐきの腫れや出血が見られる |
5〜6mm | 中等度歯周炎 | 骨の破壊が始まり、歯がぐらつく |
7mm以上 | 重度歯周炎 | 骨の大部分が失われ、抜歯の可能性あり |
歯周ポケットが深いと何が起きる?

歯槽骨の破壊が進行する
歯周ポケットが深くなると、そこに溜まった細菌が毒素を出し、歯を支える「歯槽骨」を徐々に溶かしていきます。これにより歯の動揺が起こり、やがては自然に抜け落ちてしまうこともあります。
口臭や出血がひどくなる
歯周ポケット内で繁殖する細菌は、悪臭を放つ揮発性硫黄化合物を生成します。また、炎症が続くとちょっとした刺激でも歯ぐきから出血しやすくなります。
虫歯と違って痛みが出にくい
歯周病は「サイレントディジーズ(静かなる病気)」とも呼ばれ、かなり進行するまで自覚症状がほとんどないことが特徴です。気づいたときには抜歯が必要なケースも珍しくありません。
歯周病と全身疾患の関係

近年の研究で、歯周病とさまざまな全身疾患の関連性が明らかになっています。
- 糖尿病:歯周病が血糖コントロールを悪化させる
- 心筋梗塞・脳梗塞:歯周病菌が血管内に入り炎症を起こす
- 早産・低体重児出産:妊婦の歯周病がリスクを高める
- 誤嚥性肺炎:高齢者では口腔内の細菌が肺へ流入することで発症
厚生労働省や日本歯周病学会でも、歯周病を“生活習慣病の一種”と位置付け、予防と早期治療の重要性を訴えています。
放置するとどうなる?5つのリスク

リスク | 内容 |
歯の喪失 | 支えとなる骨が失われ、抜歯が必要になることも |
嚙む力の低下 | 食事がしにくくなり、栄養摂取にも影響 |
顔貌の変化 | 歯を失うことで顔がしぼみ、老けて見えることも |
生活の質(QOL)の低下 | 食べる・話す・笑うことに支障が出る |
医療費の増加 | 進行すればするほど、治療費もかさむ傾向に |
歯周ポケットを改善するための治療法

スケーリング・ルートプレーニング(SRP)
歯周ポケットの中に入り込んだ歯石や細菌の塊(バイオフィルム)を取り除く処置です。保険適用で行える基本的な治療です。
歯周外科治療
中等度以上の歯周炎では、外科的に歯周ポケットを開いて徹底的に感染源を除去する治療が行われます。
歯周再生療法
条件が整えば、失われた歯槽骨を再生する特殊な治療(エムドゲイン、GTRなど)も選択肢となります。
予防とセルフケアのポイント

- 歯ブラシだけでなく、デンタルフロスや歯間ブラシも併用する
- 毎日の正しいブラッシング(力の入れすぎに注意)
- 3〜6ヶ月に1回の定期検診で歯周ポケットの深さを測定
- 喫煙者は禁煙も効果的(歯周病リスクが高まる)
まとめ

歯周ポケットの深さは、歯の寿命を大きく左右します。深くなればなるほど、治療も難しくなり、歯だけでなく全身の健康にも影響を及ぼしかねません。
「出血するけど痛くないから放っておこう」ではなく、気づいた時点での受診が、歯を守る第一歩です。日常のケアとプロによるチェックを両立させて、いつまでも自分の歯で過ごせる未来を目指しましょう。