「子どもの下の前歯の後ろから、もう1本生えてきた!」
そんな光景を見て驚いた経験はありませんか?
実はそれ、「乳歯が抜けないまま永久歯が生えてきた状態」で、子どもの成長期によくある現象です。
一見すると「二重歯列(にじゅうしれつ)」に見えるこの状態。
「自然に抜けるから大丈夫」と放置してしまうケースもありますが、状況によっては歯並びや噛み合わせに悪影響を及ぼすことがあります。
この記事では、その原因や放置した場合のリスク、歯科医院での対処法、家庭での見極め方をわかりやすく解説します。
目次
乳歯が抜けないまま永久歯が生える理由

乳歯と永久歯の生え変わりは、子どもの成長に伴って自然に起こる現象です。
通常、永久歯が下から押し上げることで乳歯の根が溶け、抜ける仕組みになっています。
しかし、下記のような理由でうまく乳歯が抜けないことがあります。
| 原因 | 内容 | 特徴 |
| 永久歯の位置ずれ | 永久歯が正しい位置からずれて生える | 特に下の前歯で多い |
| 乳歯の根が残っている | 根の吸収が不十分で抜けにくい | 乳歯の根が長く残る |
| 生え変わりの時期の個人差 | 成長の早い・遅いによる差 | 6〜12歳の時期に幅がある |
| 顎が小さい | 永久歯の生えるスペース不足 | 前歯が重なって生える |
| 歯並びや噛み合わせの影響 | 乳歯に力がかかりにくい | 前歯がまっすぐ生えない |
特に下の前歯(中切歯・側切歯)で起こることが多く、永久歯が乳歯の内側(舌側)から顔を出すのが特徴です。
放置するとどうなる?3つのリスク

乳歯が抜けずに永久歯が生えること自体は珍しくありません。
しかし、長期間放置すると以下のようなトラブルが起こる可能性があります。
| リスク | 内容 | 影響 |
| 歯並びの乱れ | 永久歯のスペースが確保できない | 将来的に矯正が必要になることも |
| 噛み合わせのズレ | 上下の歯が正しく当たらない | 顎や顔の成長に影響 |
| 歯磨きの難しさ | 二重に歯が並ぶことで汚れが残る | 虫歯や歯肉炎の原因になる |
特に「歯並びの乱れ」は、後から矯正で直すのに時間と費用がかかるため、早期発見が重要です。
自然に抜けるケースと抜歯が必要なケースの見分け方

全てのケースで抜歯が必要なわけではありません。
自然に抜けるかどうかは、乳歯と永久歯の位置関係や揺れ具合で見極められます。
| 状況 | 対応の目安 |
| 乳歯がグラグラしている | 数日〜数週間で自然に抜ける可能性あり |
| 永久歯が乳歯の真下から生えてきている | 自然脱落の可能性が高い |
| 乳歯が全く動かない/永久歯が後ろから生えている | 歯科医院で抜歯が必要な場合あり |
| 永久歯が横に傾いて生えている | 放置すると歯列が乱れるリスク |
ポイントは、「乳歯が動いているかどうか」と、「永久歯の生えている位置」です。
1〜2週間経っても乳歯が動かない場合は、歯科医院で確認しましょう。
歯医者での治療方法

歯科医院では、歯の状態に応じて以下のような処置を行います。
| 治療法 | 内容 | 所要時間 | 痛みの程度 |
| 乳歯の抜歯 | 麻酔をして乳歯を安全に抜く | 約10分前後 | 軽いチクッとした痛み |
| 歯列の確認 | レントゲンで永久歯の位置を確認 | 約5〜10分 | 痛みなし |
| 矯正の早期相談 | スペースが狭い場合の予防矯正 | 状況により異なる | 相談ベース |
小児歯科では、怖くない抜歯法や笑気麻酔を取り入れている医院も多く、
子どもが泣かずに治療できるよう配慮されています。
家での観察ポイントとケア方法

自宅での見守りも大切です。
焦って抜こうとせず、次の点を意識して観察しましょう。
1.乳歯がグラグラしているかを清潔な手で軽く確認
2.食事中に痛みや違和感がないか
3.永久歯が乳歯の後ろ・内側・外側どの位置か
4.歯ぐきが赤く腫れていないか
もし歯ぐきが赤くなったり、出血や膿が見られる場合は炎症を起こしている可能性があります。
その際は早めに歯科を受診しましょう。
放置した場合と早期対応した場合の比較

| 状況 | 放置した場合 | 早期対応した場合 |
| 永久歯の位置 | 傾いたまま固定されることがある | 正しい位置に誘導されやすい |
| 歯並び | 重なりやねじれが生じる可能性 | 将来の矯正が不要になることも |
| 虫歯・炎症リスク | 歯垢が溜まりやすくなる | 清掃がしやすく健康を保てる |
| 治療費 | 矯正治療などで高額になる場合あり | 低コストで済む |
つまり、「今抜くかどうか」の判断が、将来の歯並びと治療費に直結するのです。
乳歯が抜けにくい体質や傾向もある?

実は、「乳歯が抜けにくい体質」の子もいます。
その要因には次のようなものがあります。
- 根の吸収が遅い体質(歯根がしっかりしている)
- 顎の骨が硬い・成長が遅い
- 家族にも生え変わりが遅かった傾向がある
生え変わりの時期は個人差が大きく、前歯は6〜8歳、奥歯は10〜12歳ごろまでかかることもあります。
焦らず観察しながら、半年以上変化がなければ歯科受診をおすすめします。
まとめ:放置せず“タイミングを見極める”ことが大切

乳歯が抜けないまま永久歯が生えてきたとき、
大切なのは「すぐ抜くこと」ではなく、「見極めて対応すること」です。
- 乳歯がグラグラしていれば自然に抜けることが多い
- 乳歯が動かず、永久歯がずれた位置なら早めの抜歯を
- 放置すると歯並びの乱れや虫歯のリスクが上がる
永久歯は一生もの。
生え変わりの時期を正しく見守ることが、将来の美しい歯並びにつながります。
もし判断に迷ったら、まずは小児歯科でレントゲン診断を受けてみましょう。
早めの対応が、子どもの笑顔と健康な口元を守る最善策です。