「歯並びをきれいに整えるために矯正を始めたのに、虫歯ができてしまった…」そんなお悩みを抱える方は少なくありません。矯正中は装置の構造上、食べかすやプラーク（歯垢）が溜まりやすくなり、通常よりも虫歯のリスクが高まります。特にブラケット矯正を行っている場合、清掃が難しくなるため注意が必要です。
本記事では、矯正治療中に虫歯を予防するための具体的なケア方法をわかりやすくまとめました。これから矯正を始める方、すでに治療中の方も、ぜひ参考にしてください。
なぜ矯正中は虫歯になりやすいの？
矯正治療中は、口の中の環境が大きく変化します。とくにワイヤーやブラケットがついていると、次のようなリスクが生まれます。
- 歯ブラシが届きにくい：装置の隙間に食べかすが残りやすくなり、清掃が不十分になりやすい。
- プラークがたまりやすい：磨き残しが増えることで、細菌が繁殖しやすくなる。
- 唾液の流れが悪くなる：装置によって唾液の自然な流れが妨げられ、自浄作用が低下する。
- 間食の回数が増えがち：装置の影響で柔らかい食事やスナックを選ぶことが多くなり、糖質摂取の頻度が増加する。
こうした複合的な要因により、矯正中は通常よりも虫歯になりやすい口腔環境になります。単に歯を磨くだけでなく、口全体の健康管理が求められます。
矯正中の虫歯予防に欠かせないアイテム
矯正装置があると、通常の歯ブラシだけでは清掃が不十分になることが多いです。以下のような専用アイテムを取り入れることで、虫歯予防の効果を大きく高めることができます。
矯正用歯ブラシ
通常の歯ブラシとは異なり、ブラケットの周囲にフィットしやすい設計になっています。毛先が山型になっているものが多く、装置の上下を効率よく磨くことができます。
ワンタフトブラシ
1本の小さな束でできたブラシで、狭い場所や歯の裏側、ブラケットと歯の隙間など、通常のブラシでは届きにくい部位を丁寧に磨くことができます。
歯間ブラシ・デンタルフロス
矯正中は歯と歯の間に汚れが溜まりやすくなります。細めの歯間ブラシやスレッダー付きのフロスを活用して、プラークの徹底除去を心がけましょう。
フッ素配合の歯磨き剤
フッ素は歯の再石灰化を促し、酸による脱灰を防ぐ重要な成分です。毎日のブラッシングでフッ素入りの歯磨き剤を使用することは、虫歯予防において非常に有効です。
マウスウォッシュ（洗口液）
補助的なケアとして、殺菌作用のある洗口液も活用しましょう。装置の周囲まで薬液が行き渡るため、歯ブラシで届きにくい部分のケアに役立ちます。
正しい歯磨きの手順とポイント
矯正中の歯磨きは、短時間で済ませるのではなく、丁寧に時間をかけることが重要です。歯科医院では1日3回、各5〜10分程度のブラッシングが推奨されることもあります。
- 大まかな汚れを落とす：食後すぐに通常の歯ブラシで食べかすを除去します。
- 矯正専用ブラシで細部を磨く：ブラケットの周囲、歯の表面、歯茎との境目を意識して磨きましょう。
- ワンタフトブラシで残りの汚れを除去：細かい部分に残るプラークをかき出すように磨きます。
- フロスや歯間ブラシで歯間の汚れを除去：歯と歯の間に詰まった食べかすやプラークを取り除きます。
- フッ素入りマウスウォッシュで仕上げ：口全体に薬液を行き渡らせ、虫歯菌の増殖を抑えます。
これらのケアを習慣化することで、矯正期間中の虫歯リスクは大きく低下します。
食生活の見直しも大切
口腔ケアと同じくらい大切なのが「食べ方」や「食べ物の選び方」です。矯正中は装置に詰まりやすい食品や、酸性度の高い飲食物を避ける工夫が必要です。
- 間食を控える：1日1〜2回に抑え、長時間だらだら食べ続ける習慣は避けましょう。
- 甘いものはタイミングがカギ：食後のデザートとしてまとめて摂取すると、唾液の分泌が促され虫歯になりにくくなります。
- 飲み物にも注意：砂糖入りのジュースやスポーツドリンクは控え、水やお茶などを選びましょう。
- キシリトール製品を活用：虫歯菌の活動を抑えるキシリトール入りガムやタブレットは、唾液分泌も促進し一石二鳥です。
歯科医院での定期チェックの重要性
矯正中は「セルフケア」と「プロフェッショナルケア」を組み合わせることが成功のカギです。以下のようなサポートを歯科医院で受けられます。
- PMTC（専門的クリーニング）：自宅では落としきれないバイオフィルム（細菌の膜）を、歯科衛生士が専用機器で除去します。
- 高濃度フッ素塗布：ホームケアでは補えない部分を補強し、虫歯に負けない強い歯をつくります。
- ブラッシング指導：装置の種類や歯並びに合わせて、歯磨き方法のアドバイスを受けられます。
矯正中は1〜2ヶ月ごとに通院することが一般的ですが、虫歯予防の視点からもそのペースを保つことが望ましいです。
まとめ
矯正治療中は、口腔内の清掃が難しくなるため、虫歯予防の対策が不可欠です。毎日のブラッシングを丁寧に行い、専用アイテムを使いこなすこと、さらに食習慣の見直しや歯科医院での定期的なプロケアを受けることで、リスクを大幅に抑えることができます。
見えない部分の努力こそが、美しい歯並びと健康な歯を同時に手に入れる鍵です。今できるケアを積み重ね、矯正治療を成功に導きましょう。
