「奥歯が1本くらい無くても、特に生活に支障はないのでは?」
そんなふうに考えて、治療を先延ばしにしていませんか?
実は、奥歯を失ったままにしておくと、見た目以上に深刻な問題を引き起こす可能性があります。噛み合わせ(咬合)のバランスが崩れ、残っている歯や顎、さらには全身の健康にも影響を及ぼすことがあるのです。
本記事では、奥歯を放置した場合に起こりうるリスクや治療法、そして正しい対応方法について詳しく解説します。
目次
奥歯の役割とは?

奥歯(臼歯)は、食べ物を噛み砕く「咀嚼」の主役です。前歯は食べ物を切り取る役割にすぎず、本格的に噛んで細かく砕く作業は奥歯が担っています。
また、奥歯は「咬合支持」といって、噛み合わせの安定や、上下の顎の位置関係を維持するという重要な役割も果たしています。
奥歯がないことで起こる5つのリスク
リスク | 内容 | 解説 |
噛み合わせのズレ | 残った歯が動いてしまう | 上下の奥歯が無いと、反対側の歯が伸びたり、隣の歯が傾いてくる |
顎関節症 | 顎が正しく動かなくなる | 咬合バランスが崩れ、顎関節に負担がかかる |
消化不良 | 咀嚼効率が落ちる | 食べ物を十分に砕けず、胃腸に負担がかかる |
発音障害・顔貌変化 | 顔の左右非対称や老け顔に | 奥歯の支えがなくなると、頬がこけたり、輪郭が変わる |
他の歯への悪影響 | 連鎖的に歯を失うことも | 咬合崩壊が進むと、健康な歯にも影響を及ぼす |
放置すると「咬合崩壊」につながる

特に深刻なのが、「咬合崩壊(こうごうほうかい)」と呼ばれる状態です。奥歯を失うことで、上下左右のバランスが崩れ、次々と他の歯に負担がかかります。
ある調査では、奥歯を1本でも失ったまま放置した人の約30%が、5年以内に隣接する歯も失っているという報告もあります。
噛む力の低下と全身への影響

噛む力(咀嚼力)が落ちると、口の中だけではなく、全身に影響を及ぼします。
- 認知症のリスク
噛む刺激が脳に伝わらなくなることで、認知機能の低下を招く可能性があります。
- 肥満や糖尿病の悪化
咀嚼が不十分だと、食事の満足感が得られにくく、食べ過ぎや消化不良につながることがあります。
- 嚥下機能の低下
高齢になると、噛む力と飲み込む力が密接に関連してくるため、奥歯の欠損は誤嚥性肺炎のリスクにも。
奥歯を失ったときの治療法は?
奥歯を失った場合、以下の3つの選択肢が考えられます。
治療法 | 特徴 | メリット | デメリット |
ブリッジ | 両隣の歯を削って橋渡しする | 固定式で違和感が少ない | 健康な歯を削る必要あり |
入れ歯(部分義歯) | 金属のバネで支える | 費用が安い | 違和感・外れることがある |
インプラント | 顎骨に人工歯根を埋入 | 見た目・機能性が高い | 費用・外科処置が必要 |
それぞれに適応条件や費用、見た目の違いがあるため、ライフスタイルや口腔内の状態に応じて選択することが重要です。
「奥歯だけインプラント」はあり?

前歯は見た目の問題で優先されがちですが、実は「奥歯のインプラント」の方が咬合安定のために優先されるケースも多いです。
奥歯の支えがなければ、他の治療も長持ちしません。とくに矯正やセラミック治療を考えている場合は、奥歯の咬合支持を回復させることが前提になるのです。
歯を失ったあと「放置しないこと」が何より重要

たとえ1本だけの欠損でも、「今は痛くないから」「とりあえず問題ないから」と放置すると、将来的に大きな治療が必要になる可能性があります。
歯は自然に元に戻ることはありません。早期の治療介入が、将来の費用や苦痛を減らす鍵になります。
まとめ:奥歯の欠損は早めの対処がカギ

奥歯は見えにくいため、つい治療を後回しにしてしまいがちです。しかし、咬合のバランスを守るという点で、奥歯こそが口腔内の「土台」と言える存在です。
1本失ったままにしておくことで、数年後には複数本の喪失や咬合崩壊を招く可能性があります。
「奥歯がないまま放置していないか?」
「最近噛みにくくなった気がする」
そう感じたら、まずは信頼できる歯科医院で相談してみましょう。