はじめに──クセを甘く見ていませんか?
「小さいうちは指しゃぶりしてても大丈夫」
「舌で前歯を押してるけど、そのうち直るでしょう」
そんなふうに思っていませんか?
実は、指しゃぶりや舌癖(舌の悪いクセ)は、放置しておくと歯並びやかみ合わせに大きな影響を及ぼすことが分かっています。しかも一度歯並びが乱れると、自然に元通りに戻るのは難しく、矯正治療が必要になるケースも少なくありません。
この記事では、専門的なデータと最新情報を交えながら、指しゃぶり・舌癖のリスクと、効果的なやめさせ方を徹底解説します。
なぜ指しゃぶりや舌癖が問題になるの?

指しゃぶりや舌癖は、無意識に歯と顎に持続的な力を加えるため、次のような問題を引き起こします。
- 出っ歯(上顎前突)
- 開咬(奥歯は咬んでいるのに前歯が閉じない)
- 受け口(下顎前突)
- 顎の成長バランス異常
- 発音障害(サ行、タ行の発音が不明瞭)
- 口呼吸(虫歯、歯周病、睡眠障害リスクの上昇)
つまり、ただの「クセ」と放置することで、将来的な歯列矯正の負担やコストが増えるリスクが高まるのです。
指しゃぶり・舌癖と歯並びの関係を整理しよう
クセの種類 | 歯列への主な影響 | 具体例 |
---|---|---|
指しゃぶり | 上顎前突、開咬 | 出っ歯、前歯の隙間 |
舌突出癖(舌で前歯を押す) | 開咬、歯列弓の狭小化 | 前歯が閉じない、前歯が出る |
低位舌(舌が常に下がる) | 上顎の幅が狭くなる、叢生 | 八重歯、歯のガタガタ |
唇を咬む・吸う | 前歯の前突、開咬 | 上下の前歯が離れる |
口呼吸 | 顎の発育不良、歯列の狭小化 | 面長な顔、八重歯 |
クセの種類によって影響の出方は異なりますが、すべて「骨格形成に影響する」という共通点があります。
いつから対策すべき?年齢ごとの考え方
年齢 | 状況 | アプローチ |
---|---|---|
0〜2歳 | 生理的な指しゃぶり(問題なし) | 無理にやめさせない |
3〜4歳 | 癖が残るとリスクが出る時期 | 注意しながら様子を見る |
5歳〜 | 骨格や歯列に影響が出始める | 本格的な介入が必要 |
特に5歳以降になっても続く指しゃぶり・舌癖は要注意です。歯並びへの悪影響が固定される前に、積極的に対策を取りましょう。
効果的なやめさせ方 5ステップ

1.怒らずに、まず「気づかせる」
指しゃぶりや舌癖は無意識の行動です。
頭ごなしに叱るのではなく、「今、指しゃぶりしてるね」「舌が前に出てるね」と気づかせる声かけを根気よく続けましょう。
子ども本人が自覚することが第一歩です。
2.置き換え作戦を使う
手持ち無沙汰やストレスが原因なら、代替行動を与えるのが有効です。
- 小さなハンカチを握らせる
- お絵かきや工作で手を使わせる
- 抱きしめる、背中をさするなどスキンシップを増やす
心理的安心感を別の形で満たすことが、癖の自然消失を助けます。
3.成功体験を積み重ねる
「今日は5分間、指しゃぶりしなかったね!すごい!」
「寝る前の30分、舌をお口の上につけていたね!」
と、できたことを具体的に褒めます。
成功体験を可視化するために、シール帳やカレンダーに達成記録をつけるのもおすすめです。
4.お口トレーニングを取り入れる
口周りの筋肉を鍛えることで、自然と悪い癖が減ります。
簡単なエクササイズを紹介します。
- 舌を上あごにペタッとつける「スポットトレーニング」
- 口を閉じたまま風船をふくらませる
- ストローで飲み物を吸う練習(太めのストローから始める)
これらは「口呼吸防止」「正しい舌位置獲得」にも役立ちます。
5.歯科医院や専門施設を頼る
家庭だけで難しい場合は、
- 小児歯科
- 小児矯正歯科
- 口腔筋機能療法(MFT)専門施設
に相談しましょう。
癖を直すためのマウスピース型装置(例:プレオルソ、マイオブレイス)や、専門スタッフによるトレーニング指導を受けられる場合もあります。
指しゃぶり・舌癖対策グッズの比較
アイテム | 特徴 | 向いているケース |
---|---|---|
プレオルソ(機能的マウスピース) | 舌の位置を正し、口呼吸を改善 | 5歳以上で口呼吸・舌癖がある子 |
爪かみ防止マニキュア | 指に塗る苦味成分入り | 無意識の指しゃぶり |
シールカレンダー | 癖がなかった日を記録 | 成功体験の積み重ね |
ぬいぐるみ・安心グッズ | 不安感を和らげる | 情緒不安からくる癖 |
子どもによって合うアプローチが異なるため、複数の方法を組み合わせるのが成功の秘訣です。
注意すべきポイント
- 無理にやめさせると、別の癖(爪噛み・チック)が出ることがある
- 夜間は無意識なので、徐々に減らしていくスタンスが大切
- ストレスのサインとして現れている場合は、環境調整も必要
癖は「根性」で直すものではありません。子どもの安心感を守りながら、自然な形でサポートすることが成功のカギです。
まとめ──クセを直すことは未来への投資

- 指しゃぶり・舌癖は歯並び・顔貌・発音に悪影響を及ぼす
- 5歳以降も続く場合は本格対策が必要
- 「気づかせる」「褒める」「置き換える」「筋トレ」をバランスよく実践
- 必要なら小児歯科やMFT専門家の力を借りる
子どもの未来の笑顔のために、今できることから始めましょう。
癖は「悪いもの」ではありません。成長の過程で乗り越える一歩なのです。