「子どもの頃に矯正しなかったから、もう無理だろうな……」「大人になってから歯並びの治療なんて恥ずかしい」――そう思って矯正をあきらめていませんか? 実は近年、大人の歯科矯正を希望する人が増加しています。大人になってから矯正を始める人の割合は年々上昇傾向にあるのです。
大人になると、仕事や生活スタイルとの兼ね合いが気になるかもしれませんが、矯正治療の選択肢も多様化しており、「目立たない」「痛みが少ない」といったニーズに応える技術が続々と登場しています。今回は、そんな大人のための歯列矯正に焦点を当て、メリットや注意点、最新の選択肢などをわかりやすく解説します。
目次
大人になってから歯並びを整えるメリット

見た目の印象がアップ
歯並びは、笑顔だけでなく全体の印象にも大きく影響します。歯がきれいに並ぶことで、自信をもって笑顔を見せられるようになり、コミュニケーションやビジネスシーンでも好印象につながります。
口腔内環境の向上
歯並びが悪いと、どうしても歯垢(プラーク)が溜まりやすい部分が生まれ、虫歯や歯周病リスクが高まります。矯正によって歯が整列すれば、ブラッシングがしやすくなり、口腔内環境の改善にも大きく貢献します。また、噛み合わせを正しく整えることで、咀嚼力や顎関節への負担を軽減できる点もメリットです。
いつでも始められる
子どもの頃に矯正を逃してしまったという人も安心してください。歯や顎の成長が落ち着いた成人以降でも、矯正は十分に可能です。実際、日本矯正歯科学会によると、20歳以上の矯正患者が全体の約3割を占めるというデータがあります。歯科医師と相談しながら、年齢やライフスタイルに合わせた矯正プランを組むことで、納得のいく結果を得られるでしょう。
大人の矯正治療の選択肢いろいろ
ワイヤー矯正(表側・裏側)
ワイヤー矯正は歴史が長く、多くの実績があるため、複雑な歯列にも対応しやすいという利点があります。従来は歯の表面にブラケットとワイヤーを装着する「表側矯正」が主流でしたが、最近は歯の裏側に装置を取り付ける「裏側矯正(リンガル矯正)」も行われるようになり、見た目の問題をかなりカバーできるようになっています。
分類 | 特徴 | 見た目 | 適したケース |
---|---|---|---|
表側矯正 | 歯の表面に装置を付ける 歴史が長く多くの症例に対応 | 正面からはワイヤーが目立つ | 複雑な歯並びにもしっかり対応できる |
裏側矯正 | 歯の裏側に装置を付ける 表面から装置が見えにくい | ほとんど目立たない | 見た目を気にせず矯正したいが、ワイヤーの精密さも重視したい |
マウスピース型矯正(インビザラインなど)
近年注目を集めているのが、マウスピース型矯正です。インビザラインをはじめ、さまざまなメーカーが参入しており、透明のマウスピースを歯に装着して少しずつ動かしていく方法が代表的。装置がほぼ目立たず、取り外しができるので、食事や歯磨きの自由度が高いことが大きな魅力です。ただし、適用できる症例に限りがあったり、装着時間を守らないと効果が出にくいなど、自己管理が必要な面もあります。
部分矯正
「全体の歯並びはそれほど気にならないが、前歯だけ揃えたい」というような場合は、部分矯正という選択もあります。治療期間が比較的短く、費用も全体矯正より抑えられる傾向にありますが、適用できるのは限定的。歯科医師と相談して、自分の歯並びに合った方法かどうかを見極めることが大切です。
治療の流れと期間、費用の目安は?

大まかな治療の流れは、以下の通りです。
- カウンセリング・検査
歯科医師との相談で悩みや希望を伝え、口腔内や噛み合わせを詳しく検査します。レントゲン撮影や歯型の採取、写真撮影などを行い、詳細な治療計画を立案。 - 治療計画の説明
どのような装置を使い、どのくらいの期間が必要か、費用はどれくらいかなどをカウンセリングで共有します。疑問点があればこの段階でしっかり解消。 - 装置の装着・治療開始
選択した矯正法(ワイヤーかマウスピースかなど)に沿って治療がスタート。ワイヤーの場合は月1回程度の調整が必要、マウスピース型の場合は1〜2週ごとに新しいマウスピースを装着していきます。 - 保定期間
目標の歯並びになった後は、リテーナー(保定装置)を使って後戻りを防ぎます。この期間は半年から2年ほどが一般的で、人によってはさらに長く必要な場合も。
治療期間と費用の目安
矯正方法 | 治療期間 | 費用帯(参考) |
---|---|---|
ワイヤー矯正(全体) | 1年半〜3年 | 60万〜120万円前後 |
裏側矯正 | 1年半〜3年 | 80万〜150万円前後 |
マウスピース型矯正 | 1年〜2年 | 60万〜100万円前後 |
部分矯正(セクショナル) | 数か月〜1年程度 | 10万〜50万円(範囲による) |
※あくまで目安であり、医院や症例によって大きく異なることがあります。必ず歯科医師に見積もりをとって相談してください。
大人の矯正だからこその注意点

虫歯や歯周病のケアが先決
大人の歯は既に修復治療済みの歯や歯周病リスクが高まっている場合も多いため、矯正前に虫歯や歯周病の治療をすませることが重要です。治療をした後に矯正を始めないと、治療中にさらに口腔内環境が悪化するリスクも。
また、保定期間中もしっかり定期検診とクリーニングを受けることで、口腔内を清潔に保ち、矯正の効果を最大限に引き出しましょう。
仕事やプライベートとの両立
大人は仕事や家庭のスケジュールがあり、定期的に通院できるかという問題があります。特にワイヤー矯正の場合は、月1回程度の調整が必要になり、痛みや違和感が出るタイミングもあるかもしれません。マウスピース型矯正でも、1日20時間以上の装着が求められるため、自己管理がカギになります。
長期的な視点でスケジュールを立て、歯科医師と相談しながら仕事やプライベートに負担の少ない治療計画を組むことが大切です。
保定装置(リテーナー)を軽視しない
矯正治療が終わった後、ゴールだと思って油断してしまうと、歯が元の位置に戻ろうとする「後戻り現象」が起こります。しっかりと保定装置を装着し、歯が新しい位置に安定するまで時間をかけましょう。
大人の歯並び、今からでも変えられる!

心理的ハードルを乗り越える
「矯正は若い人のもの」と思い込んでしまうと、大人になってからは始めにくいと感じるかもしれません。しかし、実際に20代後半〜40代、さらには50代以上でも矯正にチャレンジしている方は年々増えています。
人前で装置が見えるのが嫌という問題も、裏側矯正やマウスピース型矯正などで大きくクリアされつつあります。
歯科医院でのカウンセリングを受けてみよう
まずは、歯科医師に現状の歯並びを診てもらうのがスタートライン。無料カウンセリングを行う医院も多く、どの治療法が適切か、期間や費用はどれくらいかなどを聞いて検討することができます。いくつかの医院を比較し、自分に合ったところを選ぶのも一つの手です。
まとめ:大人の矯正、あきらめる前に一歩踏み出そう
ここまで、大人が歯列矯正を始めるメリットや最新の矯正方法、注意点などをまとめてきました。「ずっとコンプレックスを抱えていた歯並びが、実は意外と簡単にきれいになる可能性がある」というのは、とても魅力的ではないでしょうか。
- ワイヤー矯正(表側・裏側):幅広い症例に対応。特に裏側矯正は目立ちにくい。
- マウスピース型矯正:取り外しができ、見た目にも優れているが、自己管理が必要。
- 部分矯正:限られた範囲の歯並び修正に有効で、期間・費用が少なく済むことも。
矯正治療は見た目だけでなく、噛み合わせや口腔環境の改善、ひいては全身の健康にまで好影響を与えることが期待できます。年齢を理由にあきらめていた方も、まずは歯科医師に相談してみてください。自分に合った矯正法がきっと見つかり、思いきり笑顔になれる日も遠くないはずです。