筋トレ愛好家にとって、プロテインは「筋肉の材料」であり欠かせない存在です。
ジム帰りにシェイカーを片手にした人を見かけるのは日常の光景ですが、実は歯科の立場からすると「プロテインと虫歯リスク」は無関係ではありません。
「プロテインはたんぱく質だから虫歯には関係ないのでは?」
「甘くないタイプなら大丈夫?」
そんな疑問に答えるべく、最新の研究や実際のケースをもとに、筋トレ好きが知っておくべき「歯とプロテインの意外な関係」を詳しく解説します。
プロテインそのものは虫歯を作らない

プロテインはたんぱく質が主成分であり、糖質のように虫歯菌(ミュータンス菌)のエサにはなりません。
つまり、純粋なたんぱく質そのものは虫歯の原因ではありません。
それでもリスクがあるとされる理由は「製品の成分」と「摂取のタイミング」に隠されています。
プロテインと虫歯リスクの主な要因

1. 加糖タイプの多さ
市販のドリンクやバーは飲みやすさのために砂糖やシロップを含むものが多いです。
例えば、ある有名ブランドのプロテインバーには1本で約15〜20gの糖質が含まれており、これは缶コーヒー1本と同等です。
2. 人工甘味料や糖アルコール
シュガーレスと表示されている商品でも、スクラロース・アスパルテーム・ソルビトールなどの人工甘味料が使われています。
人工甘味料は虫歯菌のエサにはなりにくいですが、一部は腸内環境や口腔内細菌叢に影響する可能性が指摘されています。最新研究では「キシリトールは虫歯抑制効果があるが、ソルビトールは逆に酸を産生する菌が利用できる」とも報告されています。
3. 口に残りやすい性質
プロテインは粉末状・粘性が高いため、歯の隙間や舌の奥に残りやすい特徴があります。特にカゼインタイプは粘り気が強く、長時間残留しやすいです。
4. 運動後の口腔環境
激しい運動で交感神経が優位になると唾液分泌が減少します。
唾液は口腔内の酸を中和し、再石灰化を促す重要な役割がありますが、運動直後は防御力が下がっている状態で、甘いプロテインを飲むと虫歯リスクが一気に上昇します。
5. 筋トレ時の口呼吸・マウスピース
口呼吸やマウスピースの長時間使用も口腔乾燥を引き起こし、虫歯や歯周病のリスクを高めることが知られています。
プロテインの種類と歯への影響比較

プロテインの種類 | 特徴 | 虫歯リスク |
ホエイプロテイン | 牛乳由来。飲みやすいが加糖タイプが多い | 中〜高 |
カゼインプロテイン | ゆっくり吸収。粘性が強く口に残りやすい | 高 |
ソイプロテイン | 大豆由来。糖質が少ない商品も多い | 中 |
プロテインバー | チョコ・シロップで加工。糖質多+粘着性 | 高 |
無糖ホエイアイソレート | 糖質ほぼゼロ。口に残りにくく低リスク | 低 |
筋トレ好きができる虫歯予防の工夫

1.無糖タイプを選ぶ
成分表示を確認し、糖質量が少ない製品を選びましょう。
2.水で割る
牛乳やジュースより水で溶かす方が歯に優しいです。
3.運動直後は水で口をゆすぐ
飲んだ後に一口水を含むだけで酸性環境を中和できます。
4.就寝前は避ける
寝ている間は唾液分泌が減るため、プロテイン摂取は歯に残りやすく危険です。
5.歯科検診を習慣に
筋トレと同じく「継続」が大切。3〜6か月ごとのチェックがおすすめです。
シチュエーション別リスク比較

シチュエーション | リスク度 | 解説 |
運動直後に甘いプロテインを飲む | 高 | 唾液減少+酸性状態+糖質残留 |
食後に無糖プロテインを摂る | 低 | 唾液が多く、再石灰化が働きやすい |
間食にプロテインバーを食べる | 高 | 粘着性が強く、糖質が多いため歯に残りやすい |
無糖ホエイを水で割る | 低 | 糖質ゼロで歯に残りにくく、最も安全な選択肢 |
まとめ

- プロテインそのものは虫歯の直接原因ではないが、加糖タイプ・バー・タイミング次第でリスクが高まる
- 運動後は口腔が酸性になり、唾液も減るため虫歯や酸蝕症のリスクが上昇
- 無糖プロテインを水で割り、飲んだ後に水でゆすぐのが最適解
- 就寝前は避け、日中は食後に摂取すると安心
- 筋肉を守るのと同じように、歯も「継続的なメンテナンス」が重要