歯周病は日本人の成人の約8割がかかっているとされる国民病です。進行すると歯を支える骨が溶け、最終的には歯を失う原因となります。従来の歯周病治療といえば、歯石除去や歯周外科手術が中心でしたが、近年「レーザー治療」が注目を集めています。
「レーザーで本当に治るの?」「従来治療と何が違うの?」と疑問を抱く方も多いでしょう。本記事では、歯周病レーザー治療の仕組みやメリット、注意点を分かりやすく解説します。
目次
歯周病治療に使われるレーザーとは?

歯科で使用されるレーザーにはいくつかの種類があります。
レーザーの種類 | 特徴 | 主な用途 |
炭酸ガスレーザー(CO2) | 水分に吸収されやすく、止血・切開に優れる | 軟組織の切開、止血 |
Nd:YAGレーザー | 組織深部に浸透しやすい | 歯周ポケット内の殺菌 |
Er:YAGレーザー | 水に吸収されやすく、歯や骨にも使用可能 | 歯石除去、歯周組織の蒸散 |
半導体レーザー | 小型で扱いやすい | 歯周病の殺菌、知覚過敏の緩和 |
特に歯周病治療でよく用いられるのは Er:YAGレーザー と Nd:YAGレーザー です。
レーザー治療の仕組み

歯周病は歯周ポケットにたまった歯垢・歯石、そしてそこに棲みつく細菌が原因で進行します。レーザー治療では、この歯周ポケット内にレーザーを照射し、以下のような効果を発揮します。
- 歯周病菌の殺菌
- 炎症組織の除去
- 歯石の除去(Er:YAGレーザー)
- 歯茎や骨の再生を促す効果
これにより、歯周ポケットの深さを改善し、症状の進行を抑えることができます。
レーザー治療のメリット

1. 痛みや出血が少ない
従来の器具を用いた歯周ポケット清掃に比べ、レーザーは局所的に熱作用を与えるため出血が少なく、麻酔をほとんど必要としないこともあります。
2. 殺菌効果が高い
レーザーは細菌を死滅させる力が強く、再感染を防ぐ効果が期待できます。抗生物質を使わずに炎症をコントロールできる点も大きな利点です。
3. 組織の再生を促す
照射による刺激で、歯茎や骨の再生をサポートする効果があると報告されています。進行した歯周病においても改善が見込めるのは魅力です。
4. 治療時間が短い
比較的短時間で治療でき、患者の負担が少なく済みます。忙しい現代人にとって通いやすい治療法といえます。
レーザー治療の注意点・デメリット

1. 全ての症例に有効ではない
軽度〜中等度の歯周病には効果的ですが、重度で骨が大きく失われている場合は外科手術が必要になることもあります。
2. 保険適用に制限がある
一部のレーザー治療は保険適用外であり、自費診療となるケースが多いです。1回あたり数千円〜1万円程度の費用がかかることがあります。
3. 技術と設備に依存する
レーザー機器の種類や歯科医師の技術力によって効果に差が出ます。最新の設備を導入しているか、経験豊富な歯科医師かどうかを確認することが重要です。
4. 再発の可能性はゼロではない
レーザー治療だけで完治するわけではなく、日常のブラッシングや定期的なメンテナンスを怠れば再発します。
従来治療とレーザー治療の比較
項目 | 従来治療(スケーリング・ルートプレーニング) | レーザー治療 |
痛み | 比較的強い場合あり | 軽度で麻酔不要な場合も |
出血 | 多め | 少なめ |
殺菌効果 | 機械的除去が中心 | 強力な殺菌作用あり |
組織再生 | 限界あり | 促進効果が期待できる |
保険適用 | あり | 限定的、自費が多い |
適応範囲 | 軽度〜重度まで幅広い | 軽度〜中等度が中心 |
レーザー治療を受ける際のチェックポイント

- どの種類のレーザーを導入しているか
- 保険か自費か、費用はどのくらいか
- 医師の経験や実績は十分か
- 治療後のメンテナンス体制は整っているか
これらを確認することで、治療の満足度を高められます。
まとめ:レーザー治療は「補助的な選択肢」

歯周病のレーザー治療は、従来治療に比べて痛みや出血が少なく、殺菌効果や再生効果が期待できる先進的な治療法です。ただし、万能ではなく、症例や歯科医師の技術によって結果が左右されるため「補助的な治療」と考えるのが現実的です。
大切なのは、レーザー治療の有無にかかわらず、日々のセルフケアと定期的なプロケアを継続することです。歯周病は生活習慣病の一つともいえるため、治療よりも「予防」に重点を置くことが、10年後・20年後の健康な口元を守る最大の秘訣です。