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「抜きます」と言われたとき、あなたはどうする?

歯列矯正を考えている方の多くが一度はぶつかる疑問、それが「歯を抜かないとダメですか?」というもの。
実際、初診で「ではまず4本抜きましょう」と言われ、戸惑った経験がある方も少なくありません。
特に健康な歯を抜くとなれば、誰だって不安になりますよね。
でも実は、「抜歯=悪い治療」というわけではありません。
矯正治療における抜歯は、あくまで理想のかみ合わせや見た目を実現するための“手段”にすぎないのです。
大切なのは、自分にとって本当に必要かどうかを正しく判断すること。
この記事では、抜歯が必要とされる理由、治療の流れ、そして「抜きたくない」と思ったときにどうすればいいのかを、わかりやすく解説していきます。
なぜ矯正治療で抜歯が必要なケースがあるのか?

抜歯が必要になる最大の理由は、「スペース不足」です。
歯の大きさに対して顎が小さい場合、すべての歯をきれいに並べるだけの余地がありません。
この状態を叢生(そうせい)、いわゆる「歯並びのガタガタ」と呼びます。
また、見た目だけでなく「かみ合わせ」のバランスを整えるために抜歯が必要になることもあります。
たとえば、上顎が前に出ている「出っ歯(上顎前突)」や、下顎が前に出ている「反対咬合」などは、歯の本数を調整しないと全体のバランスが取れないケースがあります。
専門的に見た抜歯の必要性

矯正のゴールは「整った歯並び」だけではありません。
本当に大事なのは、咬合(かみ合わせ)の安定と機能の確保です。以下の3つの観点からも、抜歯が必要なケースがあります。
咬合崩壊を防ぐため
歯並びが悪いまま強制的に歯を並べてしまうと、かみ合わせが不安定になり、数年後に「奥歯が使えない」「一部の歯にだけ負担がかかる」といった咬合崩壊が起こることがあります。
咀嚼効率の維持
スペース不足のまま無理に並べた場合、前歯の重なりが強すぎたり、奥歯の接触が不十分になったりして、咀嚼効率(噛む力・すり潰す力)が低下します。これにより、消化不良や肩こり、頭痛など体調への悪影響が出ることも。
咬合支持域の確保
咬合支持域とは、「かみ合わせを支える歯の範囲」です。とくに奥歯がきちんと接触していないと、咀嚼や発音、顎関節の安定性に悪影響を及ぼします。
非抜歯で無理に歯を押し込んだ結果、この咬合支持域が狭くなると、長期的な健康にマイナスになります。
抜歯が必要なかどうかをどう判断する?

以下のような診査・診断をもとに、担当医が総合的に判断します:
診断方法 | 内容 |
セファロ分析 | 頭部X線を用いた骨格・歯の位置の分析 |
歯列模型の作成 | 歯型を採取し、歯の大きさ・並び方・スペースを確認 |
写真検査 | 顔全体や口元のバランスを確認し、審美的要素も考慮 |
口腔内診査 | 虫歯・歯周病の有無、顎の成長状況などを評価 |
これらを踏まえ、「非抜歯で対応可能か」「抜歯の方が咬合と見た目に安定性があるか」を判断します。
抜歯矯正と非抜歯矯正の違いを比較

比較項目 | 抜歯矯正 | 非抜歯矯正 |
対象 | 中〜重度の叢生・骨格不調和 | 軽度の叢生・顎の発育が良好 |
メリット | 正確な咬合とEラインが得られる | 健康な歯を残せる・短期間になりやすい |
デメリット | 抜歯への抵抗感・治療が長期化 | 歯の戻りやスペース不足のリスク |
抜歯が必要な場合の治療の流れ

- 精密検査(レントゲン・口腔内写真・歯型採取)
- 診断と治療方針の説明
- 抜歯(一般的に小臼歯:前から4番目)
- 数日〜2週間後に矯正装置の装着
- 歯の移動(1年〜2年程度)
- 保定期間(後戻り防止のリテーナー使用)
歯を抜きたくない…そのときに伝えるべき言葉

もし「できることなら抜きたくない」と思ったら、診察時に次のように伝えてみましょう:
・「できれば非抜歯での治療を希望しています」
・「抜歯と非抜歯、それぞれのメリットとデメリットを詳しく教えてください」
・「咬合崩壊や機能面への影響が心配です。長期的な視点でのアドバイスが欲しいです」
これにより、担当医もあなたの希望を考慮しながら適切な説明をしてくれるはずです。
まとめ:抜歯は“悪”ではなく“選択肢の一つ”

矯正治療における抜歯は、目的ではなく手段です。
スペースを作るだけでなく、機能美(見た目+かみ合わせのバランス)を実現するためのプロセスであり、長期的な口腔の安定を図るうえで非常に有効なケースも多くあります。
どうしても不安がある場合は、セカンドオピニオンや非抜歯治療に実績のある歯科医院での相談もおすすめです。
あなたの口元と健康を守るために、納得のいく選択をしてください。