誰もが一度は経験したことがある「口内炎」。食事や会話のたびに痛みが走り、日常生活に支障をきたすことも少なくありません。通常は1〜2週間で自然に治るケースが多いのですが、なかなか治らない口内炎には注意が必要です。長引く口内炎の背後には、思わぬ病気が隠れている可能性があるのです。
今回は「治らない口内炎」の原因となる病気やその治療法について、歯科医師の視点からわかりやすく解説します。
口内炎の基本的な種類と特徴

まずは一般的な口内炎について理解しておきましょう。
種類 | 主な原因 | 特徴 | 治癒期間 |
アフタ性口内炎 | ストレス・疲労・栄養不足 | 白い潰瘍に赤い縁 | 1〜2週間 |
カタル性口内炎 | 口の中の傷や虫歯・入れ歯の刺激 | 赤く腫れ、しみる痛み | 1週間前後 |
ウイルス性口内炎 | ヘルペス、手足口病など | 水ぶくれや広範囲の炎症 | 1〜3週間 |
真菌性口内炎 | カンジダ菌の増殖 | 白い苔状の付着物 | 長引きやすい |
通常の口内炎は生活習慣の改善や市販薬で回復します。しかし、2週間以上続く場合や繰り返し発症する場合は別の病気を疑う必要があります。
治らない口内炎の背後にある可能性のある病気

1. ビタミン・ミネラル不足
特にビタミンB群や鉄、亜鉛の不足は粘膜の修復を妨げ、口内炎を長引かせます。
- ビタミンB2:皮膚や粘膜の修復に必須
- 鉄分不足:貧血と同時に口内炎を引き起こす
- 亜鉛不足:味覚障害や免疫力低下も伴う
2. 免疫力低下を伴う疾患
- 糖尿病:高血糖により免疫力が低下し、口内炎が治りにくくなる
- HIV感染症:口腔内にカンジダやヘルペスが繰り返し出現
- がんや自己免疫疾患の治療中:抗がん剤や免疫抑制剤の副作用で発症
3. 胃腸の病気
潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患では、口内炎が症状の一部として現れることがあります。腸の炎症と同時に、繰り返す口内炎に悩む患者も少なくありません。
4. ベーチェット病
全身性の自己免疫疾患で、口内炎が頻繁に出現するのが特徴です。目や皮膚、関節など全身に症状が及ぶため、慢性的な口内炎がある場合は注意が必要です。
5. 口腔がん
最も注意すべきなのは口腔がんです。特に舌がんは口内炎と似た症状を示すため、自己判断で放置することは危険です。
- 2週間以上治らない
- 硬いしこりがある
- 出血を繰り返す
このような症状がある場合は、早急に専門医を受診する必要があります。
治らない口内炎を見分けるポイント
見分けポイント | 通常の口内炎 | 疑うべき病気 |
持続期間 | 1〜2週間で改善 | 2週間以上続く |
痛み | 強いが徐々に改善 | 悪化する、持続する |
発生頻度 | 年数回程度 | 繰り返し頻発 |
部位 | 頬、舌、唇などランダム | 同じ部位に固定 |
付随症状 | 疲労感程度 | 発熱、体重減少、全身症状 |
治療法と対処法

一般的な治療
- 軟膏や貼付薬:ステロイド入り軟膏、鎮痛成分を含む薬
- うがい薬:殺菌作用で炎症を抑える
- サプリメント:ビタミンB群や亜鉛を補給
根本的な治療
原因疾患がある場合は、その治療が不可欠です。
- 糖尿病 → 血糖コントロールの改善
- 自己免疫疾患 → 免疫調整薬の使用
- 胃腸疾患 → 消化器内科での治療
- 口腔がん → 早期発見・切除が最優先
自宅でできる予防法

- バランスの良い食事を心がける
- 規則正しい生活と十分な睡眠
- ストレスを溜めない
- アルコールや喫煙を控える
- 口腔内を清潔に保つ(歯磨き・うがい)
特に「口腔内の乾燥」は口内炎の大きなリスクです。水分補給やキシリトールガムの活用も効果的です。
まとめ:長引く口内炎は医療機関へ

口内炎は多くの場合一過性のトラブルですが、2週間以上治らない場合や繰り返す場合には全身疾患や口腔がんの可能性を疑う必要があります。
- ビタミン不足や免疫力低下 → 生活習慣の見直しと検査
- 胃腸や自己免疫疾患 → 内科的治療が必要
- 舌や粘膜のしこりや出血 → 口腔がんの可能性も
「ただの口内炎」と軽視せず、早めの受診を心がけることが、健康を守る第一歩です。