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スポーツドリンクで虫歯に?夏休みの水分補給と歯の守り方

スポーツドリンクで虫歯に?夏休みの水分補給と歯の守り方

はじめに──熱中症対策と虫歯対策は両立できる?

炎天下で走り回る子どもたちの必需品といえばスポーツドリンク。汗で失われた水分とミネラルをまとめて補える便利な飲み物ですが、歯科の世界では「虫歯の隠れ原因」としても知られています。とくに夏休みは部活・キャンプ・プールなどでの摂取頻度が急増し、気づかないうちに歯がダメージを受けるケースが後を絶ちません。本記事では「なぜスポーツドリンクが虫歯リスクを高めるのか」「水分補給と歯の健康を両立させるコツ」をわかりやすく解説します。


スポーツドリンクが虫歯を招く二大要因

糖分が多い

代表的な市販品を分析すると、100ミリリットルあたりの糖質は5〜8グラム。500ミリリットルのペットボトル換算では角砂糖10〜13個に相当します。糖はミュータンス菌など虫歯菌の大好物。口に留まる時間が長いほど酸をたくさん作り、歯を溶かすスピードが加速します。

酸性度が高い

スポーツドリンクのpHは3.5前後。エナメル質が溶け始める目安はpH5.5以下なので、一口飲むだけで口内は強酸性に傾きます。唾液が酸を中和し、再石灰化が起こるまで20〜40分。ダラダラ飲み続けると、その間ずっと歯が溶けやすい状態になってしまうのです。


飲料別・虫歯リスク早見表

飲料名平均pH糖質g/100mL虫歯への影響度
水・麦茶6.80ほぼゼロ
牛乳6.64.8低い(カルシウムが再石灰化を促進)
100%オレンジジュース3.88.6
スポーツドリンク3.56.0
炭酸飲料(コーラ類) 2.52.511.3最高

コーラ類に比べれば糖は少ないとはいえ、酸性度と飲む回数を考慮するとスポーツドリンクの虫歯リスクは「高」に分類されます。


歯を守りながら水分補給する5つのヒント

1.量より回数を意識する

500ミリリットルボトルを持ち歩き、休憩ごとに少しずつ飲む“チビチビ飲み”は危険。酸が口に残る時間が長くなります。必要なタイミングで200〜250ミリリットルをゴクッと飲み切り、その後は水か麦茶をひと口含んで口をゆすぐと、口内pHは5分以内に中性へ戻ります。

2.基本は水+塩タブレット

厚生労働省「熱中症環境保健マニュアル」は、1時間以内の軽度発汗なら水か0.1%食塩水で十分としています。汗で大量にナトリウムを失う長時間運動だけスポーツドリンクを使い、ふだんは水+塩タブレットで代用しましょう。

3.ストロー&マイボトル戦法

歯面に液体が当たる面積を減らすにはストローが有効。さらに水とスポーツドリンクを2本持参し、「スポドリを飲んだ直後に水で一口すすぐ」のをルール化すると酸性滞在時間を大幅カットできます。

4.就寝前は糖ゼロ飲料

夜間は唾液分泌が日中の約半分に低下。スポーツドリンクを飲んで寝ると歯が酸にさらされ続けます。寝る前の水分補給は水・白湯・麦茶に切り替えてください。

5.フッ化物とキシリトールを味方に

歯みがきはフッ素濃度1,450ppmの歯みがき剤を2センチ取り、2分磨き。運動後にはキシリトール100%ガムを10分ほど噛めば唾液量が約1.4倍になり、再石灰化が促進されます。


シーン別 最適ドリンクプラン

活動時間と気温汗の量推奨ドリンク飲み方
屋外30〜60分(気温30℃台前半)軽度水または麦茶15分ごとに100mL
屋外90分(気温35℃超)中〜多量スポーツドリンク200mL+水300mL最初にスポドリ、すぐ水ですすぐ
室内ゲーム・勉強わずかこまめに少量
プール・海水浴断続的麦茶+塩タブレット30分おきに150mL

家で作れる“低リスク補給ドリンク”

レモン塩ハチミツ水(500ミリリットル)

  • 水 450ミリリットル
  • ハチミツ 大さじ1(糖15g)
  • レモン汁 小さじ1
  • 食塩 1グラム

糖度3%、pH5.2と市販スポーツドリンクよりマイルド。ナトリウムとブドウ糖が適度に入るので、吸収スピードは保ちつつ虫歯リスクを抑えられます。


子どもの「飲み方クセ」チェックリスト

行動パターンどう影響する?改善のヒント
家でも常にスポドリ口内が長時間酸性で脱灰続行食卓を麦茶に変更
ナイトスタンドに飲み残し就寝中に細菌が活性化寝る前に全て片付け、水だけ置く
部活中にボトルをチビチビ酸性時間が延びるゴク飲み+水すすぎに切り替え
ストローを使わない上前歯に直撃し着色しやすいストローで歯面接触を減らす

歯科定期検診のススメ

スポーツドリンクを愛飲する子ほど、3か月ごとのクリーニングが効果的です。専門の器具で着色とプラークを一掃し、フッ化物を高濃度で塗布すれば、脱灰しかけた箇所も修復可能。保険診療で1回2,000〜3,000円とコスパも良好です。


まとめ──賢い飲み方で夏を乗り切ろう

  1. スポーツドリンクは「量より回数」が虫歯リスクを左右。
  2. 飲んだ直後の“水すすぎ”で酸性時間を短縮。
  3. 夜の水分補給は糖ゼロ飲料へチェンジ。
  4. フッ化物歯みがき+キシリトールガムで歯を強化。
  5. 3か月ごとに歯科クリーニングで早期トラブルを予防。

この5ステップを守れば、熱中症対策と虫歯対策は両立できます。親子で「飲み方ルール」を作り、元気な体と健康な歯で夏休みを満喫しましょう。

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