アイスクリームや冷たい飲み物を口にしたとき、「キーン」と歯にしみる経験をしたことはありませんか?
このような症状は「知覚過敏」と呼ばれ、歯科医院を訪れる患者さんの大きな悩みのひとつです。
一時的な不快感で済むこともありますが、放置すると日常生活に支障をきたすだけでなく、虫歯や歯周病などの病気が隠れている場合もあります。
今回は、知覚過敏の原因と治療法を解説します。
知覚過敏とは?

知覚過敏は、歯の象牙質が露出して外部刺激に過敏に反応する状態を指します。冷たいものや熱いもの、甘いもの、ブラッシングの摩擦、風などに反応して痛みを感じます。
日本歯科医師会の調査によると、成人の約3人に1人が知覚過敏の症状を経験しているとされ、決して珍しい病気ではありません。
知覚過敏が起こる仕組み

歯の表面はエナメル質で覆われ、その下に象牙質があります。象牙質には「象牙細管」という微細な管が多数存在し、その奥には歯髄(神経)があります。
何らかの理由で象牙質が露出すると、冷たい水やブラッシングの刺激が象牙細管を通じて神経に伝わり、「しみる」症状が起こります。
知覚過敏の原因

知覚過敏はさまざまな要因が重なって起こります。主な原因を整理すると以下の通りです。
歯の摩耗やすり減り
・強い力で歯磨きをする
・硬い歯ブラシを長期間使用する
・歯ぎしりや食いしばりの習慣がある
これらはエナメル質を徐々に削り、象牙質を露出させます。
酸によるエナメル質の溶解(酸蝕症)
・炭酸飲料やスポーツドリンクの頻繁な摂取
・胃食道逆流症などによる逆流性酸
酸によってエナメル質が溶けると、象牙質が現れ、知覚過敏の原因になります。
歯周病による歯茎の退縮
歯周病や加齢に伴い歯茎が下がると、歯の根元(セメント質)が露出します。セメント質はエナメル質よりも弱く、容易に削れて象牙質が出やすいのです。
歯科治療後の一時的症状
ホワイトニングや歯石除去の直後は、象牙質が一時的に刺激に敏感になり、知覚過敏が生じる場合があります。
知覚過敏と虫歯・歯周病の違い

「歯がしみる」症状は知覚過敏だけでなく、虫歯や歯周病でも起こります。違いを理解することが大切です。
特徴 | 知覚過敏 | 虫歯 | 歯周病 |
痛みの性質 | 一時的に鋭くしみる | 持続的でズキズキする | 噛むと痛む・歯茎の腫れ |
見た目の変化 | 特になし | 黒い穴・変色 | 歯茎の腫れ・出血 |
進行性 | 生活習慣で悪化しやすい | 放置で確実に進行 | 放置で歯の喪失リスク |
原因 | 象牙質の露出 | 細菌による歯質破壊 | 歯周組織の炎症 |
痛みが持続する、歯茎が腫れているなどの場合は、知覚過敏ではなく他の病気の可能性があります。
知覚過敏の治療法

症状や原因に応じて、歯科医院ではさまざまな治療が行われます。
薬剤塗布
フッ化物や知覚過敏抑制薬を歯面に塗布し、象牙細管を封鎖して刺激を遮断します。
レジン充填
象牙質が大きく露出している場合、歯科用樹脂でカバーして保護します。
レーザー治療
レーザーを照射して象牙細管を封鎖する方法もあり、比較的新しい治療法です。
マウスピース療法
歯ぎしりや食いしばりが原因の場合、マウスピースを使用して歯の摩耗を防ぎます。
歯周病治療
歯茎の退縮が原因であれば、歯周病の治療やメンテナンスが必要です。
自宅でできる予防とセルフケア

知覚過敏は日常の工夫で予防・改善することも可能です。
- やわらかめの歯ブラシを使用し、力を入れすぎず磨く
- フッ素配合の歯磨き粉を使用する
- 酸性飲料をだらだら飲まない
- 歯ぎしりがある場合は就寝時の環境改善(ストレス管理)を意識する
- 定期的に歯科検診を受ける
まとめ

知覚過敏は、歯の摩耗や酸蝕、歯茎の退縮など複数の要因によって生じる症状です。
「冷たいものがしみる」からと放置してしまうと、生活の質を下げるだけでなく、虫歯や歯周病といった他の疾患を見逃すリスクにもつながります。
日常的なセルフケアの工夫と、歯科医院での適切な診断・治療により、多くの場合は改善が可能です。
気になる症状がある場合は、早めに歯科医へ相談し、原因に応じた対策を始めることが大切です。