「いつも口が開いている」「寝ているときに口が乾く」「いびきをかく」
これらの症状に心当たりはありませんか?
それは、“口呼吸”のサインかもしれません。
実は、口呼吸は単なる癖ではなく、歯並び・虫歯・歯周病・顔の形にまで影響を及ぼす“全身の健康問題”です。
特に成長期の子どもでは、放置すると将来の噛み合わせや見た目にも大きく関わります。
この記事では、口呼吸が歯に与える悪影響と、今日からできる改善トレーニング法を詳しく解説します。
目次
口呼吸とは?なぜ問題なのか

本来、人間の呼吸は鼻呼吸が基本です。
鼻は吸い込んだ空気を「加湿・加温・浄化」するフィルターの役割を持っています。
一方、口呼吸は空気が直接のどや口腔内に入るため、
乾燥・菌の侵入・炎症が起こりやすくなります。
| 比較項目 | 鼻呼吸 | 口呼吸 |
| 空気の加湿・除菌 | あり(鼻毛・粘膜が機能) | なし(乾燥しやすい) |
| 虫歯・歯周病リスク | 低い | 高い |
| 唾液分泌 | 安定 | 減少 |
| 舌・顎の発達 | 正常 | 不十分 |
| 顔の成長・歯並び | バランス良い | 面長・出っ歯傾向に |
口呼吸が歯に与える5つの悪影響

① 虫歯・歯周病になりやすい
口で呼吸をすると、常に空気が口内を通るため、
唾液が乾いて自浄作用が低下します。
唾液は細菌の繁殖を抑える重要な役割を持っていますが、
乾燥によって菌が増えやすくなり、虫歯・歯肉炎のリスクが急上昇します。
特に前歯の根元は乾燥しやすく、初期虫歯ができやすい部位です。
② 歯並びが悪くなる(出っ歯・開咬)
口呼吸の人は、無意識に口を開けたまま舌が下がり、
上顎前歯を内側から支える力が失われます。
さらに、唇や頬からの外圧バランスが崩れることで、
歯が前方へ傾く“出っ歯”や“開咬(上下の歯が閉じない)”になりやすいです。
これは、子どもの歯並び不正の原因として非常に多く見られます。
③ 顎の発達が不十分になる
口呼吸が続くと、舌の位置が常に低くなり、
上顎の幅が狭く、顔が縦長に発達する傾向があります。
いわゆる「口呼吸顔」と呼ばれる特徴は以下の通りです。
- 顔が面長
- 顎が細い
- 口がポカンと開く
- 鼻筋が通らない
このような成長パターンは、見た目の印象だけでなく、
発音や噛み合わせにも悪影響を与えます。
④ 口臭が強くなる
乾燥した口内は、唾液による洗浄作用が働かないため、
細菌が作る揮発性硫黄化合物(VSC)が増え、口臭が発生します。
また、舌苔(ぜったい:舌の白い汚れ)も厚くなり、
さらに臭いの原因が強化されてしまいます。
⑤ 免疫力が低下する
鼻呼吸は、吸い込んだ空気をフィルターに通すことで
ウイルスや花粉の侵入を防ぎます。
一方、口呼吸は細菌や異物がそのまま喉に入るため、
風邪やアレルギー性鼻炎などの感染リスクが高まります。
自分が口呼吸かチェックする方法

下の項目で3つ以上当てはまる方は、口呼吸の可能性が高いです。
□ 寝ているときに口が開いている
□ 朝起きたときに口が乾いている
□ 鼻詰まりが多い
□ 唇がよく荒れる
□ 食事中にクチャクチャ音がする
□ 口臭が気になる
□ 横顔が少し前に出ている(出っ歯傾向)
口呼吸を改善する3つのトレーニング法

① 舌の正しい位置を覚える「スポットポジション」
舌の先を上の前歯のすぐ後ろの“スポット”に軽く当て、
上顎全体に舌をくっつけるようにします。
この位置が保てるようになると、自然に口が閉じ、鼻呼吸がしやすくなります。
目安:唇を閉じた状態で、頬や顎に力が入っていないこと。
② 「あいうべ体操」で口周りを鍛える
1日3回、1セット10回を目安に行いましょう。
- 「あ」:大きく口を開ける
- 「い」:口角を引き上げる
- 「う」:唇を前に突き出す
- 「べ」:舌を思い切り出す
この動作を繰り返すことで、口輪筋や舌筋が強化され、自然に口を閉じられるようになります。
③ 鼻呼吸を意識する「リップシールトレーニング」
口を閉じて鼻で呼吸する感覚を身につける方法です。
- 日中に唇の間に軽くマスキングテープを貼る
- 寝る前に「鼻で3秒吸って、口で6秒吐く」呼吸法を実践
- 鼻詰まりがある場合は耳鼻科で治療
継続することで、無意識でも鼻呼吸ができる筋肉バランスが整います。
歯科医院でできる口呼吸対策

口呼吸は「歯科」「耳鼻科」「小児科」が連携して改善するべきケースもあります。
歯科では、以下のようなサポートが可能です。
| 対応内容 | 目的 |
| 口腔筋機能療法(MFT) | 舌や口の筋肉バランスを改善 |
| マウスピース(口閉じ補助装置) | 就寝時の口開き防止 |
| 矯正治療(小児・成人) | 歯並びや顎の形を整える |
| 生活習慣指導 | 食事・姿勢・呼吸トレーニングの指導 |
子どもの口呼吸は早めに改善を

成長期の子どもは、顎の骨や歯の位置が発達途中のため、
口呼吸を放置すると“顔の形そのもの”が変わることがあります。
早期に発見し、
- 舌トレーニング
- 姿勢改善(猫背を防ぐ)
- 鼻呼吸習慣づくり
を行うことで、将来的な矯正リスクを減らすことができます。
まとめ:口を閉じることが歯を守る第一歩

- 口呼吸は、虫歯・歯周病・歯並び・顔の発達に悪影響を与える
- 唾液の減少で菌が増え、口臭や免疫低下も引き起こす
- 舌・口輪筋のトレーニングで改善可能
- 歯科医院でのMFT指導や矯正治療も有効
“口を閉じて鼻で呼吸する”という基本動作は、
歯を守るだけでなく、健康と美しさの基礎でもあります。
今日から少しずつ、正しい呼吸習慣を意識してみましょう。