「できるだけ自分の歯を残したい」——多くの人がそう願う中、注目されているのが「MTA治療」です。
従来なら抜歯や神経を取るしかなかったケースでも、MTA(Mineral Trioxide Aggregate)という特殊な材料を使えば、歯の延命が期待できます。
この記事では、歯科先進国でも高評価を得ているMTA治療について、その特徴・適応症・費用感・他の治療法との違いなどを詳しく解説します。
目次
MTA治療とは?|歯の神経を守る“最後の砦”

MTA治療とは、「神経をできるだけ残す」ことを目的とした治療で、歯の深部まで虫歯が進行した場合などに行われます。
使われる「MTAセメント」は、ミネラルを主成分とした高アルカリ性の歯科材料で、高い殺菌性と組織再生力が特徴です。
この治療の最大のメリットは、「通常なら神経を取らなければならない状況でも、MTAを使えば神経を保存できる可能性がある」という点です。
MTAセメントの特徴とメリット

以下の表で、MTAセメントの特性を整理します。
特徴 | 内容 |
殺菌効果 | 強アルカリ性で細菌の活動を抑制 |
生体親和性 | 組織とのなじみが良く、炎症を引き起こしにくい |
水分に強い | 唾液や出血がある環境でも硬化しやすい |
石灰化促進作用 | 歯の根の先端や穿孔部に新しい組織ができやすい |
長期安定性 | 劣化しにくく、長期間にわたって機能が維持される |
どんなときにMTA治療が選ばれる?

MTA治療は万能ではなく、すべての虫歯に適応できるわけではありません。以下のようなケースで効果が期待されます。
- 深い虫歯で神経が露出しているが、まだ神経が生きている場合(生活歯髄保存療法)
- 神経を一部残して歯を保存する「部分断髄」
- 根管治療中に穿孔(パーフォレーション)したときの封鎖
- 根の先端の閉鎖が未完成な若年者の治療
- 根の先端(根尖)病変が大きく、再発リスクが高い場合
従来の根管治療との違い

MTA治療と一般的な根管治療(神経をすべて取って消毒し封鎖する治療)を比較してみましょう。
項目 | MTA治療 | 従来の根管治療 |
神経の保存 | 可能(部分的または全体) | 不可能(神経を完全に除去) |
治療回数 | 1〜2回 | 2〜4回(再感染時はさらに追加) |
再発のリスク | 低い(殺菌+封鎖性に優れる) | やや高い(封鎖性に課題あり) |
費用 | 高め(保険適用外) | 保険適用で安価 |
対象年齢 | 若年者〜中高年まで幅広く適応 | 年齢問わず適応 |
MTA治療の費用相場と注意点

MTA治療は保険適用外の「自由診療」となるため、費用はクリニックによって異なります。
内容 | 相場(1歯あたり) |
MTAを用いた部分断髄 | 約3万〜5万円 |
MTAを用いた根管封鎖 | 約5万〜10万円 |
MTAとセラミック補綴を併用 | 10万〜20万円以上 |
※精密機器(マイクロスコープ)やラバーダムの使用などにより、価格が変動する場合があります。
注意点としては、
- 保険適用外のため事前に見積もりを確認すること
- MTAの特性を熟知した歯科医師を選ぶこと
- MTAの色がやや暗く、前歯には向かない場合もあること
などが挙げられます。
「抜歯しかない」と言われたときのセカンドオピニオンに

ある程度進行した虫歯や穿孔に対して「もう抜歯しかありません」と言われたとしても、MTA治療で歯を保存できる可能性がゼロではありません。
実際、アメリカ歯内療法学会(AAE)では、MTAを使った神経保存治療は予後の良い治療法の一つとして広く認知されています。
国内でも、マイクロスコープやCTを活用し、精度の高いMTA治療を行う歯科医院が増えてきました。
MTA治療が注目される理由とは?

現在、MTA治療が世界中で注目されているのにはいくつかの背景があります。
- 歯を抜かずに済むことでQOL(生活の質)を維持できる
- インプラントやブリッジなどの大がかりな治療を回避できる
- 神経を取ることで起きる歯の脆弱化を防げる
- 治療期間が短く、再発のリスクも少ない
といった点から、患者・歯科医療者双方にとってメリットが大きいのです。
まとめ:歯を残す選択肢としてのMTA治療

MTA治療は、「歯を削らずに残す」ことを目指す現代歯科医療の中でも特に注目されている先端治療のひとつです。
「神経を取らずに済むならその方がいい」と思う方にとっては、知っておくべき選択肢といえるでしょう。
歯を抜きたくない、神経をできるだけ残したい、そんな思いがある方は、ぜひMTA治療を扱う歯科医院に相談してみてください。
治療の可能性は、あなたの選択で大きく変わるかもしれません。