鏡を見て「歯の色が気になる」「黒いシミみたいなものがある」と感じたことはありませんか?
歯の色の変化にはさまざまな原因がありますが、その多くは「ステイン(着色汚れ)」か「虫歯」のどちらかです。
しかし、見た目が似ているため「これは汚れ?それとも虫歯?」と判断に迷うことも少なくありません。
放置して良いものと、すぐに治療が必要なものを見極めることは、歯を守るうえでとても重要です。
今回は、歯の色が変わる代表的な原因である「ステイン」と「虫歯」の違いを、最新情報とともにわかりやすく解説します。
ステイン(着色汚れ)とは?

ステインとは、飲食物や生活習慣によって歯の表面に沈着する汚れのことです。
エナメル質表面に付着しているため、基本的には歯科医院でのクリーニングやホワイトニングで取り除くことができます。
ステインの主な原因
- コーヒー、紅茶、緑茶などに含まれるタンニン
- 赤ワインに含まれるポリフェノール
- カレーやソースなど色の濃い食べ物
- タバコのヤニ(タール)
- マウスウォッシュの成分(クロルヘキシジンなど)
特に日本人はお茶の摂取量が多く、歯の着色を気にする人が多いといわれています。
虫歯とは?

虫歯は、口腔内の細菌が糖を分解して作り出す酸によって歯が溶かされる病気です。
進行すると穴があき、痛みや腫れにつながります。自然治癒はせず、必ず歯科での治療が必要です。
虫歯の進行段階(日本歯科保存学会分類)
- C0:表面が白く濁る「初期虫歯」。まだ削らずにフッ素で治せる可能性あり
- C1:エナメル質に小さな穴や黒い点ができる
- C2:象牙質に進行し、冷たい物や甘い物でしみる
- C3:神経まで達し、強い痛みを伴う
- C4:歯の大部分が失われ、最終的に抜歯が必要になることも
ステインと虫歯の見分け方

見た目が似ているため、素人判断は難しいですが、特徴を整理すると違いが分かります。
項目 | ステイン(着色汚れ) | 虫歯 |
色の特徴 | 茶色・黒色・黄色。境界がはっきりしていることが多い | 白濁→茶色→黒色と進行。境界が不明瞭になることも |
部位 | 前歯や奥歯の表面、歯と歯の間に多い | 歯と歯の間、噛む面の溝、歯と歯茎の境目など |
表面の状態 | なめらか。舌で触るとツルツルしている | ザラザラ・凹みがある |
痛みやしみ | 基本的になし | 冷たい物・甘い物でしみる、痛みがある |
除去できるか | クリーニングやホワイトニングで除去可能 | 治療が必要。自然に治ることはない |
見分けが難しいケースもある

- 初期の虫歯は「白いシミ」に見えることがあり、ステインと逆の色味になることがある
- ステインが濃く沈着すると、虫歯のように黒ずんで見える
- 金属の詰め物周囲に沈着する「メタルタトゥー」は虫歯と間違えやすい
このため「見た目だけで判断するのは危険」です。必ず歯科医院での診断が必要です。
自宅でできるセルフチェックの目安

- 舌で触ってザラつきや凹みがある → 虫歯の可能性
- 甘い物や冷たい物でしみる → 虫歯の可能性
- 茶色い汚れが歯ブラシで多少薄くなる → ステインの可能性
- 痛みが全くなく、見た目だけ気になる → ステインの可能性
ただし、これらはあくまで目安。確実な診断は歯科医師のみが行えます。
改善方法

ステインの場合
- 歯科医院でのクリーニング(PMTC)
- エアフローによる着色除去
- ホワイトニングで漂白
虫歯の場合
- 初期段階ならフッ素塗布やシーラントで進行抑制
- C1以降は削って詰め物・被せ物が必要
- 進行していれば神経治療や抜歯の可能性も
予防のためにできること

- 食後の丁寧な歯磨き+フロス
- 着色しやすい飲食物を摂ったら水で口をゆすぐ
- 定期的な歯科検診(3〜6か月に1回)
- フッ素入り歯磨き粉を使う
- 禁煙を心がける
まとめ

- 歯の色が変わる原因は「ステイン」と「虫歯」が代表的
- ステインは表面の汚れで、クリーニングで除去可能
- 虫歯は進行性の病気で、放置すると悪化する一方
- 見た目が似ているため自己判断は危険。歯科医院での診断が必須
- 定期検診とセルフケアで「見た目」と「健康」を同時に守ることが大切