「口の中が乾く」「しゃべりづらい」「口臭が気になる」
そんな不快な症状に悩んでいませんか?それはドライマウス(口腔乾燥症)のサインかもしれません。
ドライマウスは、単なる「乾き」ではなく、口腔内の健康に大きく関わる問題です。原因や対策を知らずに放置すると、虫歯や歯周病、さらには全身の健康にも影響を与えるおそれがあります。
この記事では、唾液の重要な働きとともに、ドライマウスの原因、セルフケア法、そして歯科での治療方法までを詳しく解説します。
ドライマウスとは?

ドライマウスとは、唾液の分泌が減少し、口の中が乾いた状態が続くことを指します。正式には「口腔乾燥症」と呼ばれ、近年、中高年層を中心に増加傾向にあります。
唾液の分泌量が少なくなることで、以下のような症状が見られるようになります。
- 口がネバネバして話しづらい
- 食べ物が飲み込みにくい
- 口臭が強くなる
- 舌がヒリヒリと痛む
- 虫歯や歯周病が増える
こうした症状は、QOL(生活の質)を著しく低下させる要因になります。
唾液の持つ重要な役割

唾液は単なる“水分”ではなく、口腔内の健康を守る多機能な天然のバリアです。以下の表に、唾液の代表的な役割をまとめました。
働き | 内容 |
自浄作用 | 食べカスや細菌を洗い流す |
抗菌作用 | リゾチームなどの酵素で細菌の繁殖を抑える |
緩衝作用 | 酸性に傾いた口内を中性に戻す |
再石灰化作用 | 酸で溶けた歯を再び修復する |
潤滑作用 | 発音や嚥下をスムーズにする |
味覚の補助 | 舌の味蕾が機能するための媒介液となる |
このように唾液は、口腔内環境の維持に欠かせない存在であることがわかります。
ドライマウスの主な原因

ドライマウスには、一つの原因だけでなく、複数の要因が関係していることが多いです。以下に代表的な原因を示します。
原因 | 内容 |
加齢 | 唾液腺の機能が低下しやすくなる |
薬の副作用 | 降圧剤・抗うつ薬・抗ヒスタミン薬などが唾液分泌を抑制する |
ストレス | 自律神経の乱れにより唾液腺がうまく働かない |
口呼吸 | 口内が常に空気に触れ、乾燥しやすくなる |
シェーグレン症候群 | 自己免疫疾患の一種で、唾液腺が破壊される |
放射線治療 | 頭頸部の治療によって唾液腺がダメージを受ける |
とくに高齢者の場合は「加齢」+「薬の副作用」+「ストレス」が重なって発症しやすくなります。
ドライマウスのセルフチェック

以下の項目に思い当たる場合、ドライマウスの可能性が高いと言えます。
- 口が乾いて話しづらい
- 夜中に喉が乾いて目が覚める
- 食べ物が飲み込みにくい
- 舌がヒリヒリしたり割れたりする
- 口臭が気になる
- 唾液が粘つく
症状が気になる場合は、早めに歯科や内科で相談することをおすすめします。
自宅でできる対策とケア方法

軽度のドライマウスであれば、日常生活の工夫で改善が期待できます。以下に主な対策法を紹介します。
1. こまめな水分補給
一度に大量に飲むよりも、こまめに少量ずつ水を口に含むのが効果的です。アルコールやカフェインは利尿作用があるため、避けるようにしましょう。
2. 唾液腺マッサージ
耳下腺・顎下腺・舌下腺など、唾液腺を優しくマッサージすることで、唾液の分泌が促されます。
【耳下腺マッサージ】
ほお骨の下あたりを、指の腹でやさしくくるくる円を描くように押します。
3. キシリトールガムを噛む
噛む刺激で唾液の分泌が促進されます。シュガーレスでキシリトール入りのものが推奨されます。
4. 室内の湿度を保つ
乾燥した空気は口内の水分も奪います。加湿器や濡れタオルなどで湿度を50〜60%に保つことが理想です。
5. 鼻呼吸を意識する
日中はもちろん、就寝時の口呼吸もドライマウスの原因になります。鼻呼吸を意識し、場合によっては「口閉じテープ」などを使用するのも有効です。
歯科や病院で行われる治療法

症状が進行していたり、シェーグレン症候群などの疾患が疑われる場合は、専門的な治療が必要です。
唾液分泌促進薬の処方
「サリグレン」「エボザック」などの唾液腺を刺激する薬が処方されることがあります。
人工唾液スプレーの利用
口腔内に保湿ジェルやスプレーを塗布することで、一時的な乾燥を和らげます。市販でも入手可能です。
根本疾患の治療
シェーグレン症候群などの持病が原因の場合は、内科・リウマチ科などとの連携が必要となります。
ドライマウスと混同されやすい症状との比較
症状 | 主な原因 | 対応先 |
ドライマウス | 唾液の分泌不足 | 歯科・内科 |
口内炎 | 栄養不足・刺激物・免疫低下 | 歯科・皮膚科 |
舌痛症 | 精神的要因・ビタミン不足 | 心療内科・口腔外科 |
同じ「口の不快感」でも、原因は異なります。適切な診断と治療を受けることが大切です。
放置するとどうなる?ドライマウスが招くリスク

ドライマウスをそのままにしておくと、以下のような問題を引き起こします。
- 虫歯や歯周病のリスク上昇
- 口臭の悪化
- 発音障害や摂食障害
- 舌炎・口角炎などの炎症
- 睡眠の質の低下
中でも「口臭の強化」と「会話しづらさ」により、人とのコミュニケーションが億劫になるケースもあります。
まとめ|唾液は健康のバロメーター

ドライマウスは軽視されがちですが、唾液の量が減ることは口腔環境だけでなく、全身の健康にも大きな影響を及ぼすサインです。
日常的にできる対策を取り入れながら、症状が続く場合は早めに医療機関に相談しましょう。
口の中が潤っていることは、食事・会話・笑顔すべての質を高めてくれます。
毎日の生活の中で、「唾液のチカラ」にもう一度目を向けてみてはいかがでしょうか。